Target3:立海大付属中男子テニス部
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スポーツバッグに着替えや洗面用具などの荷物を詰め込む。最後に先程柳生から借りたハンカチを乗せてチャックを閉めた。
「桜乃ちゃん、里、忘れ物は無い?」
最後にやって来て何を今更とも思うが、里が二年生になっている以上、あたしがこの中で最年長なのだ。必然的にマネージャー三人を纏めるのもあたしだった。
「はい、大丈夫です!」
「大丈夫。」
「オッケーオッケー、じゃあ最後の確認して行くから二人は先に行ってて。」
二人を追い出して最後に部屋を確認する。シーツも返したし、荷物を入れるのに使っていたロッカーにも忘れ物は無い。うん、大丈夫そうだ。
部屋を出て、オリエンテーションの為に食堂へ足を向けようとした足をくるりと方向転換する。女子部屋だった部屋の扉に頭を下げた。
この合宿であたしが得た物は、大切な家族と卑怯な自分への罪悪感。良い物だけでもなく、悪い物だけでもなかった。
本来ならテニスの知識とか、選手のコンディション、リーダーシップに効率の良い仕事の仕方とかを学ぶ為の合宿だったのだけど。それでも、あたしにとって得た物が多かった事に変わりはないのだ。
「……ありがとう、ございました。」
たった二泊三日。その中でこの部屋で過ごす事は殆ど無かったけれど、人前で同じ事をするのはかなり恥ずかしいから。
頭を上げて今度こそ食堂へ向かう。その途中であたしを引き止めたのは、ほぁら〜という鳴き声だった。この声は。
その声の主を見つけようとキョロキョロと辺りを見渡すと、少し高めの位置にある窓から覗く木の枝の上に座る一匹の猫。
「……カルピン?」
あたしが名前を呟くとカルピンは一言、ほあら~と鳴いた。カルピンの居る枝は高めの窓から見える所から分かるように少々高い。降りられなくなっているのかもしれない。助けないと。
スポーツバッグを肩にかけ直して、ダッシュで玄関まで向かう。息を弾ませたまま靴を履き替えて、先程カルピンを見かけた辺りの木々を一つ一つ見上げながらカルピンを探す。あぁ、見つけた。
ほぁら〜と呑気に鳴き声を上げるカルピンは助けてという意味にも思えるし、放っておけという意味にも取れる。そもそも、あたしは木登りは出来るが高い所は苦手なのだ。登れても降りられる自信はない。
カルピンがもう一度ほぁら〜と鳴き声を上げる。あぁ!もう!!
あたしは木の根元にスポーツバッグを縦にして立てかけ、そこに足を乗せ、スポーツバッグが自分の体重に耐えられなくなる前に手近な木の枝に足を掛ける。あとはもう、折れないような丈夫な枝を選び登っていけば良い。