Target3:立海大付属中男子テニス部
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最後のコールが響き、最後の試合が終わった。あとはもうオリエンテーションを待つだけだ。二泊三日の合宿が終わる。
榊先生にスコア表を渡し、その集計結果がオリエンテーションで発表されるのを待つ。今回はあくまでも強化合宿が目的だから、公式試合には何ら影響はないけれど、参加校の内どこが一番勝ち星が多かったかを集計するのだ。その間に各自与えられた部屋を片付ける。勿論あたしも。
「琹さん!」
榊先生にスコア表を渡し、思考に耽っていていたあたしを、背中から誰かが抱きしめる。力強く、手加減なんて知らないようなそんな力で。実際手加減なんてしてないんだろう。前も思ったが、彼の力加減は女子相手には、少々強すぎる。
「力を入れすぎだ、赤也。」
溜息混じりの柳の言葉に、すいませんと赤也は力を緩めたが、それでもあたしを離しはしなかった。
「赤也、離して。」
彼に抱きつかれるのも、懐かれるのも、本当は悪い気はしない。嬉しいと思う気持ちもある。
だけど今は、肩に乗る彼の重みが、先程感じていた重圧のように思えてしまう。私情を挟んではいけないことを分かっていながら、あたしは。
ふと柳か赤也に用があったのだろう、小走りにあたし達に駆け寄って来た柳生の目が見開かれる。
「何故、泣かれているのですか……?」
おずおずといった様子の柳生の言葉に初めて自分が泣いていることに気がついた。ポロポロと自分でも信じられないくらいに無意識に涙が溢れる。いつからそうしていたんだろう。もしかしたら、赤也が声を掛けてくる前からだったのかもしれない。
「……分かんない。どうしたんだろ、あたし。」
胸に広がる違和感も、自分の意思とは関係なく流れる涙も。分からない。あぁでも、涙の方は、一つだけ心当たりがあった。
「大丈夫ですよ。……こんなことを私が言うのは些か違うような気もしますが……。」
"貴女には頼れる人がいるのでしょう?"
柳生のその言葉が頭に焼き付く。頼れる人、それを聞いて真っ先に思い浮かぶのは、やっぱり氷帝の面々だった。だからこそ。だからこそあたしは正直で公平でなければいけなかったのだ。
スコア表の余白。試合を見学しながらあたしなりに気がついたことを記す時、あたしは容赦無く例の三人の欠点を書いた。精神面で問題がある、と。
仁王、柳ペアと対戦した二人ならいざ知らず、怪我をした彼は、長い間溜め込んでいた不安が偶々今日溢れてしまっただけだったのに。あたしは容赦無く、彼の名前も書いた。
日吉に体力面で難がある事は、書かなかったのに。
彼らの信頼を裏切ったのは、あたしだった。