Target3:立海大付属中男子テニス部
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「ゲームセット!ウォンバイ……。」
各コートから試合終了の声が上がる中、海堂と日吉の試合は続いていた。長期戦。日吉に不利な方向へ傾いた試合だが、タイブレークまで引き延ばされる程に二人の実力は拮抗している。
氷帝の主要メンバーの内、まだ試合が終わっていないのは日吉だけだった。
誰も氷帝コールはしない。青学もコールはしていない。
それはこれが練習試合だからではなく、皆この試合に魅せられているからだ。点を取られては取り返しの繰り返し。けれど忘れてはいけないのは、日吉のフォームだ。彼はまだ、普通のテニスをしている。
「ゲームセット!ウォンバイ日吉!」
結局最後まで日吉は古武術のフォームにはならなかった。それでも結果を見れば、見事に勝利を収めている。流石、とコートから出てきた日吉に声をかけようとして、やめた。きっとこの勝利も、日吉にとっては当たり前のモノなのだろう。彼の表情には喜色よりも悔しさが滲んでいたから。もっと早く決着をつけたかったという悔しさだとあたしが知ったのは、跡部の言葉に日吉が顔を顰めたからだった。
すれ違い様、無様だな、と。
跡部のそれが侮蔑や軽蔑でない事は、氷帝の部員なら全員知っている。勿論日吉も。だから一々傷ついたりはしないけれど、顔を顰めて、それでも自身で同じ事を思っていたのだろう、否定はしなかった。
「十分凄いと思うんだけどなぁ。」
あの海堂相手に、温存して尚、勝利を収めるのだから。試合終了後に息が乱れているくらい。気にしなければ良いのに。と、そう思ってしまう所が、ストイックな彼らとの違いなのだ。
横着で諦めの早い自分が、少しだけ申し訳なかった。
日吉と海堂の試合が終わって、空いたコートに今度は仁王と柳が入る。相手をする二人は氷帝の準レギュラーだった。
ちらり、と視線を手元のスコア表に移したのは、別に試合から興味を失ったからではない。差があり過ぎる実力を見ていられないからだった。
氷帝の部員が弱いとは思っていない。あたしなんかより全然強いし、本来なら立海の二人に十分勝てる実力がある。けれど、氷帝の二人は仁王と柳のダブルスに当たった時点で、負けていた。ぽきり、と音を立てて折れた心がやる気のない試合を見せていた。
果たして一瞬で終わってしまった試合のスコアを書き込み、余白に部員二人のメンタルが問題と足した。これを見て判断をするのは、榊先生だ。彼らを準レギュラーとして残すか、……落とすか。
何時もながらこの作業だけは好きになれない。欠点をこっそりと榊先生に言いつけているようで。
実際にあたしが書き込んだ情報で準レギュラーから外された部員もいる。あぁ、そうだ。先程の、怪我をした彼も。
あたしは二人の名前の横にもう一人、先程手当したばかりの彼の名前も書き足した。
それを判断するのは、榊先生だ。でも。あたしがもう少し甘くしていれば、彼等はこのままでいられるだろうな。のしかかる重圧に指先が震えた。