Target1:氷帝学園男子テニス部
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「なぁ、汐原はこの学校の七不思議を知ってるか?」
そう言って楽しそうに昌山は笑う。
アンタ転校生じゃなかった?と口にする前に、するすると、まるで語り慣れたかのように紡ぎ出される七不思議は
「昌山、七個超えてるんだけど。」
「まじで?……まじだわ。」
指折り数える昌山と一瞬お互いに目が合って、次いで同時に吹き出した。ゲラゲラと色気もへったくれもない笑い声が二人分、騒がしい教室に紛れていく。それを中断して、昌山がもう一度口を開いた。
「あぁ、でもあと一個!一個だけ!なんかさ、屋上から願いを書いた紙飛行機を飛ばして、敷地外まで飛ばせたらその願いが叶うんだと。」
「何言ってんの、屋上なんて入れないでしょ。」
というか、それは七不思議なのか。ホラー要素ないけど。
そうは思いつつ、楽しそうに紙とペンを用意する昌山の姿は予想通りで、加えて昌山と一緒に馬鹿やるのが大好きなあたしも、この七不思議を検証することは大歓迎なわけで。
そういうわけで、放課後。あたし達は屋上に続く扉の目の前に居た。
「来たは良いけど、開くわけないよね。」
そう言いながら、ドアノブを捻る。
ガチャガチャと音を立てるが開く予兆は見えない。残念ながら開かないみたいだ、と"事実"をそのまま昌山に伝えるべく、振り向いた、瞬間。キィと音を立てて屋上へと続く扉が開いた。
なんで、どうして。
さっきまで、確かに鍵がかかっていたはずなのに。
「え、まじで開いてんじゃん。」
昌山は勝手に開いた扉になんの疑問も抱かなかったのか、躊躇いもなく屋上へと出て行く。
この学校に入学して、三年目。何度か屋上へと続く階段まで足を運んだことはあるが、ただの一度もドアが開いている所を見たことがない。
あぁ、これはまるで。
まるで七不思議に呼ばれているみたいだ、と思春期特有の所謂、厨二病的な思考に口角が上がる。
これだから昌山と連むのはやめられない。
あたしも昌山に続いて屋上に出る。
初めて足を踏み入れる屋上は、ドラマや漫画で見るものと違い、気軽に昼食を食べられるようなスペースなんてなかった。どこもかしこも埃が溜まっていて、歩く度に上履きの跡が残る。座り込むとスカートがすぐに汚れそうだ。
ゆっくりと昌山の足跡を追うように歩くと、すぐに屋上の
ひゅんっと心臓が鷲掴みになるような感覚。純粋な恐怖。思わず一歩後ろに下がった。
「汐原、お前高いとこダメだっけ?」
怯んだあたしを目敏く見つけて、新しいおもちゃを手に入れたように
「……別に、そんなんじゃないから。ほら、早く飛行機飛ばすよ。」
不貞腐れたように言って、あたしは一歩下がったまま願いを乗せた紙飛行機を投げる。それに昌山も続いた。
2つの飛行機の行方は、下を見ることができないあたしに代わって昌山に見守ってもらおうと、あたしはその場に腰を落とす。スカートが汚れるのはこの際良しとしよう。
半信半疑のまま昌山に付き合ってみたけれど、あぁ、そう言えばコイツの願いはなんなのだろう。それを問うてみようと口を開いた、瞬間に昌山の声が重なる。
「汐原!あとちょっとで敷地外……っ!」
それを遮るように、強い風が吹いた。