その少女、少年につき対立
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「汐原さん、昼休みに生徒会室へ行ってもらえる?」
編入から一週間ほど経つかという頃、先生に言われた言葉にとうとうか、と素直な感想を抱く。生徒会、つまり風紀への問題を指摘しているのだろう。現在の3-Bの状況がそれをありありと表していた。
男であり女を主張するあたしは扱いにくいのか、腫れ物のように扱われている。早い話が浮いているのだ。あたしが女であれば女子のグループが声をかけてくれるだろう。逆もまた然り。
しかしながらあたしは女であることを主張する男なのだ。扱いにくいにも程がある。
そんなあたしを無視でもしてくれればいいのに、優しいクラスメイトは戸惑いながらも最低限の関わりを持ってくれている。そうでなければ、真っ先にいじめの対象になりかねないのだ。
つまりは、風紀を乱すもの。あたしの立ち位置はそんなものであって、今回の呼び出しも当たり前のものだと納得する。
まぁ、納得のいかない呼び出しだったとしてもその呼び出しを拒否するという選択肢はあたしには用意されていない。女装であたしの立場は大分揺らいでいるのに、それに加えて呼び出し拒否なんて出来たものじゃない。何か問題を起こして先生方の心象が悪くなってしまうと、女子生徒の制服を剥奪され兼ねないのだ。
真面目に定評のあったあたしだ。きっと女のままだったとしても拒否することはないのだろう。だとしても。
鋼鉄のハートの持ち主とは言えないあたしを憂鬱な気分にさせるには十分だった。
生徒会は生徒と名のつくだけあって、きっと待ち構えているのは生徒なのだろう。いっそ、教員の方が気が楽だ。
生徒は当たり前ながら中学生で、子どもだ。精神的にではあるがこちらが年上である以上最終的に歩み寄るのは此方になるだろう。
教員だったなら此方が年下なのをいいことに、その事実に甘えてやるのに。
思わず漏れたため息に心を淀ませながら目の前の扉をノックした。
あぁ、せめて、呼び出しの相手が話を聞かないまま女子生徒の制服を剥奪するような理不尽なヤツでなければいいけれど。そんな権限、生徒会長といえど一生徒である人物が持っていなければ、いいけれど。
それでも、やっぱり神さまはあたしのことを忌み嫌っているのだ、と実感する羽目になるのは目の前に佇む異様に豪勢な扉を開けてすぐの事だった。