その少女、少年につき編入
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足元に視線を投げる。
女子よりもほんの少しだけ骨ばってはいるが、女の子のものと捉えられないこともない。すべすべの
突然投げ出された現状に納得のいかなかったあたしがとった方法は単純かつ明快で、全くなんの解決にもなっていないものだ
。あの後18歳のあたしに告げられたのは、中学校へ編入する旨だった。
ふざけるな、と思った。これ以上の屈辱があるかと。性別を奪われたあたしから、さらに年齢さえも奪うのかと。
それでも抵抗しなかったのは、無駄だと悟ったからに他ならない。
何時ぞやに、何かの漫画で読んだパラレルワールド。あたしはここをソレだと思うことにした。何かの拍子に平行だったあたしの世界が交わってしまったのだ、と。あぁ、こんな考え、バカらしくて反吐がでる。それでも。
きっと、この世界のあたしはまだ15に満たないほどの子供なのだろう。そう思い込むことにした。さすがに高校生も後半の年齢の人物を、無理やり中学校へ編入させるような非常識なことができるはずもないし、するメリットもないのだから。
勿論納得するかと言われれば、否と答える他ないのだが。
「汐原。」
名前を呼ばれて3-Bの表札がついた教室に入る。その瞬間聞こえるのは、疑問の声。
当たり前だ。あたしの隣にいる教師はあたしを男だと紹介した。しかしながら、あたしの恰好は。
「女の子……?」
誰かが小さく声を上げる。あたしの纏っているものはスカートだった。そう、女子制服。
あたしは見た目だけでも女であることを選んだのだ。
「汐原琹。よろしく。」
愛想よくニコリとした笑みを浮かべるとパラパラと戸惑い混じりの拍手が教室を埋める。
顔は変わらずあたしのままだった。
骨格も男のものではあるが華奢と言われる部類の体格で、見た目上は完全なる女子だろう。見た目上は。
女子生徒の格好はあたしの必死な説得の末許可が下りたが、女扱いされるわけではない。体育は勿論男子に混じる。気持ち悪いと非難めいた声が上がることも覚悟の上だ。それでも、それでもあたしはこの道を選んだ。男であることを否定するために。
奇異の目で見られることがなんだ。あるべき格好をして何が悪い。そう胸を張ったあたしを担任が席に着くように促す。当たり前ながら隣は女の子だ。
よろしく、と軽い笑みと合わせて声をかけると戸惑いながらも、優しい彼女は首を縦に振ってくれるのだった。