夢にまでみた恋だった
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「なんや、汐原アホやなぁ!」
「ひっどい、謙也くん!」
そんな風に笑い声を上げながら二人で放課後を過ごす。夕暮れの誰も居ない教室に二人、適当な席に座って、適当な話題を選んで。カラカラと笑い声を上げる。
私の、夢だった。
憧れとか目標とかそんな意味の夢ではなくて、本当に、眠っている時に見る夢。
深層心理からの、私の欲望だった。
私は謙也くんに声をかける。今日はもう帰ろう、と。そう言うといつだって、彼はせやなと隣に並んでくれる。それで、いつもは忙しなく動かす足を私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれるのだ。そうして二人で並んで帰路についた時、ぱちり、と目が覚めた。
「なんだ……いつもの、夢か。」
目に入るのは見慣れた部屋で、びりびりと耳元で煩い時計もいつものことだった。ほぅ、とため息を漏らす。自分が少し痛い自覚はあった。それでも、夢にまでみてしまうくらい謙也くんが好きな事実は変えられない。
ぼーっと天井を眺めて考え込んでいると、びりびりと再度目覚まし時計が鳴り出す。鬱陶しさを隠しもせずに文字盤を見ると、普段よりも少し早い時間だった。どうして、こんな時間にアラームをかけたんだっけ……と暫し考えて、慌てて布団を出る。バタバタと音を立てながら階段を降りると洗面所に駆け込んだ。
リビングからお母さんの怒声が飛んでくるが、それどころじゃない。
今日は、今日は……!
謙也くんとの日直の日!
遅れないようにと、いつもより早くアラームをかけていたのに、結局学校に着くのはいつもと同じくらいになってしまいそうだった。
あぁ、もう!朝練のある彼に合わせて少し早めに合流しようと昨日約束したのに!
顔を洗って歯を磨いて、リビングに入ると朝食用に並んでたお皿の上から食パンを引っ掴んで咥える。お行儀が悪いとお母さんから再度怒声が飛んだ。
それを無視してパンを咥えたまま玄関で靴を履く素ぶりを見せると、呆れたようにお弁当を差し出してくれた。ゴクリと喉を鳴らす。食パンの最後の一口を飲み込んだ。
「行ってきます!」
早歩きで道を進みながら、程々に梳かした髪を手櫛で乱雑に纏める。手首に引っ掛けていたヘアゴムに髪を巻き込むと、二、三回それを繰り返した。ポニーテールというには、少し高さも髪の長さも足りない気がするけど。ボサボサの髪を下ろしたまま行くよりもマシだった。
髪を結い上げてとりあえずの身嗜みが整うと、もう早歩きをしている理由もない。少しでも急ごうと歩幅を広げ、足を前後に動かす速度を上げた。走る。
結局、私が学校に着いたのは、約束していた時間よりも十分程すぎた頃だった。
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