本気の恋はやめよう
name input
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ぽたり、ぽたりと頬を熱い雫が辿る。それは、涙だった。
心臓が気持ち悪い。息が詰まる。
苦しいと全身が訴えていた。
思わず窓の外へ投げていた視線を手元に移す。すると誰かの机を私の涙が濡らしてしまった。
それが少し申し訳なくて奥歯を噛み締める。
涙も、私の想いも。
もうこれ以上、
お願いだから、宍戸くんを欲しいなんて思わないで。
宍戸くんをどれだけ想っても、彼には想っている人が居る。彼女が宍戸くんを想っているのかは定かではないが、きっと両想いなのではないかと思う。宍戸くんの視線の先の彼女が、宍戸くんと同じ目をしているようにしか思えなかった。
あぁいいなぁ、と純粋な羨望と、どうして私じゃいけないの、と酷く濁った嫉妬がじくりじくりと胸を刺す。
「……宍戸くんが、大好き。」
伝わらない言葉をぽつりと口にすると幾分か気が楽になった。そう、私は。
私は、宍戸くんが好きなのだ。
初めて彼をこの教室から見つけた、その日から。私はずっと、本気で彼が好きなのだ。
じっと組んだままの両手を見つめる。もうこれ以上涙が溢れないように瞬きを止めたら、じわりと涙の膜が張った。窓から入ってくる夕日がそれに反射して、視界がキラキラと眩しい。
私はそっと瞳を伏せた。
あぁ、これだから。これだから本気の恋なんてしたくなかったのだ。
叶わないことを知っていても、諦めることも叶わない。私にできることといったら、こうして誰にも気付かれずに涙を流す事だけ。胸を痛めて想ったところで、彼に届きはしないのに。
「……あー、悔しいなぁ……!」
彼女よりも早く、宍戸くんの存在を知っていたら。宍戸くんに私の存在を知ってもらっていたら。この結果は変わっていたのかもしれないのに。
「……もう、もうやめる。宍戸くんを好きなの、やめる。」
自分に言い聞かせるように繰り返した言葉は、明らかに拗ねた色しか浮かんでいなかった。
欲しい玩具を買ってもらえない子供が泣き喚いて駄々をこ捏ねるように、私のこれも手に入らないものに執着して駄々を捏ねているに他ならなくて。だから、もう。
「……もう、やめる。本気の恋は、もうやめる。」
だって、叶わないことを知っているから。
堪えていた涙が、静かに落ちていった。
2/2ページ