短編
名前
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放課後、帰り支度を終え人気の無くなった教室で、いつも通り名前ちゃんの手を繋ぐと、「ふふふ」と嬉しそうにはにかんでいた。
「お殺、今日はずいぶんご機嫌だね……?なにか良いことでもあったのかな」
そう聞けば彼女はいつもよりも甘く蕩けたような笑顔をこちらに向けてー…それがあまりにもカワイイので…私の心臓がドッ!と大きな音を立てた。
痛いぐらいに心臓が鳴っていて、嫌に顔も熱くなる。
ああ、もう…♡何度見ても彼女の笑顔に殺されそうになってしまう。
彼女と居ると私も知らない私が出てくる。それもなんだか、悪くないと思ってしまうのだから、ずいぶんと毒気が抜かれてしまったな……。
そんな私の心情など知ってか知らずか……いや、彼女のことだから私が引っ掻き回されて右往左往する様子を見て楽しむことぐらいするだろうけど…。
いつもより欲を孕んだ硝子玉の様な瞳が私を射貫いた。
夕焼けの赤さが彼女の宝石をさらに美しく飾り立てている。
見惚れている私を他所に彼女はくすくす笑って
「これから良いことをする予定なんだ。ね、手伝ってくれる?」
と私の手の甲をすり、すり…と甘えるように撫でた。ただ撫でられているだけなのに、やけにいやらしくて……身体がぴくりと跳ねてしまう。
「あ、うん……勿論、私で出来ることなら……♡」
言葉尻が小さくなったけれど、彼女はその返事に対して満足そうに笑って…。
にぎにぎ。
そんな擬音がピッタリなぐらい名前ちゃんはご機嫌に私の手のひらを小さな手のひらでぎゅっと握り、圧迫している。
あ、あぁ〜♡力が弱すぎてカワイイッ、私が、ちょっと力を入れて握れば潰れちゃいそうな小さな手が!
「あはぁ…♡」
つい、興奮が漏れる。きっと握り潰したら…細い指の骨はポキリと折れて……あの、夕焼けで染まったガーネットの瞳から、美しい涙がぽろりと零れ落ち、「痛いよ…」「歪くん、やめて」「虐めないで」ってヒンヒン泣いちゃうんだろうなぁ…♡
「あぁあっ♡!殺りたくなっちゃうよ……♡」
また自分の息が上がって乱れるのがわかる。今すぐここで名前ちゃんを殺りたい。彼女を解剖して中身を見てみたい。彼女の血にまみれて、ぬくもりを感じれたらなんて幸せだろうか……。もちろん、そんなことをしたら死んでしまうから、出来ないのだけど。それでも、なんでこんなに満たされてしまうんだろう。
「はーっ♡はーっ♡はぁ♡あぁ♡」
興奮のせいか口内に唾液が溢れ、ごくり、と音を鳴らして飲んでみても少し口の端から零れ出てしまった。
それに気づいたのか、彼女の空いていた左手が私の口元へ運ばれ、くち…と音を立てて指先で唾液が拭われた。唇に触れる彼女の指先も熱く、ああ♡その指、噛んでしまいなぁ……♡
ギリギリと力を込めれば、私の犬歯が彼女の桜貝のような小さな爪を割り、血が出て……泣いて嫌がる君を見て、ダメなのに興奮する……そんな空想のせいか、またしてもじんわりと分泌された唾液が、口腔内に溜まり、飲み込みきれず垂れ流れる。
「はぁ…♡」と吐息を漏らすと、
添えられていた左手がするりと頬を撫で、くちゅ、と音を立てた。
私の飲み込みきれなかった唾液が、また彼女の指先を掠めたんだ。
「あは……興奮しちゃったの?目がとろとろして……かぁいいね、歪くん」
「っ…ん♡ぅ♡」
花燃ゆる笑顔で、いつもなら言わないであろう言葉とともに、ずっと繋いでいただけのもう右手を、ゆるりと持ちあげ、繋いでいた私の手を、彼女の小さな口元に近付ける。
ーちゅ。
小さな音だった。本当に、聞こうと思ってないと聞こえないような、そんな小さなリップ音。
ちゅっ、ちゅ、ちゅうぅ…
名前ちゃんのふっくらとした赤い唇が私の手の甲にキスをする。一回、二回、…なんども当てては離してを繰り返してー……。
彼女のお気に入りの、うっすらとミントの香りがするリップクリームで少し湿った唇が、手のひらに当たるたびにゆっくりと密着し、ゆっくりと剥がれていく。その気持ちよさに心臓が大きな鐘を打つ。
ただの粘膜の接触だ。なのに彼女のものだと思うとこんなにも胸が苦しく、身体の芯から痺れるのだろう。
「んあぁっ♡あ、名前ちゃ………♡」
ここ、まだ学校なのに…!いつもなら、私がぴっとりとくっついて、彼女の方から「もう!変態!離れてってば!」って言われて、遠ざけられるのに、なんで今日は、こんな……♡積極的な…♡♡
他人の目線なんて気にならない。い殺、嘘だ。こんなにも彼女に愛されている私を見てくれ!……そう願っても、残念ながら観客は居らず、増える気配も特段なかったけれど……けど、それで良かったのかもしれない。この小悪魔を独り占めできる権利を持っているのは、これから先、私だけなんだから。
けど今、彼女に顔を見られたら……鋭く差し込む西日に誤魔化しを期待してしまうぐらいには、赤らんでいることだろう。パチ、と宝石とが瞬いた。私の欲を見抜いている、愛おしい瞳。
今、彼女に愛を囁かれたら、私は野生を削がれた家猫のように彼女の膝の上で喉をゴロゴロと鳴らし、甘えたな鳴き声で、彼女に平伏するんだ。
「歪くん、だあいすき…♡」
私を溶かす甘い声と共に宝石の奥が一等煌めく。私の一番美しいな宝物。私の暗い影もその輝きで照らして、暗闇から押し上げてくれるんだ。
「っ♡わ、私もっ♡名前ちゃん、すき、♡〜ぁ、はぁ♡だいすき♡」
うっとりとした彼女の責め苦に理性が飛びそうになる。
道具を使って責め立てるわけじゃなし、彼女の一声で私は簡単に溶かされていく。
「よだれでビショビショになっちゃった…」みて、わたしの手。
と目の前に差し出された左手は私の唾液でいやらしくしっとりと濡れている。
「歪くんが、濡らしたんだよ」
「あっ♡殺だ……♡」口先ではそう言うけれど、本当はもっと、もっとしてほしい。私を辱めて、いい子だねって撫でて欲しい。
名前ちゃんにしか出来ない方法で、私を愛して。
けれどあんまり調子に乗ってしまえばこの積極的な名前ちゃんは途端に「もうおーしまい」と、いやらしい手遊びを辞めてしまうだろう。
辞めてほしくない。腹の奥にぐらぐらと湧き上がる欲をしまいつつ、彼女を見つめる。ああ……♡ご機嫌に私を弄んでいる。上目遣いに見ては私が困惑するところを見て、楽しそうに笑っている。あぁ……カワイイ♡殺りたい…♡でもこのまま…ずっと二人で生きていきたい。最近は彼女が居るなら……殺っても殺らなくても………私の隣にいてくれるなら、それで良いとさえ思うようになった。
殺し屋の家系に生まれた、出来損ないの子供。身体の殆どが取り替えられて自分がなんなのか分からず苦しんだ過去。人間にも化け物にもなれなかった、これまでの人生。
赤い夕焼けの中思い出すのは彼女と出会ってからの美しい思い出たちが私を肯定し、存在を許してくれる。
ーーーどんなに面倒くさくても、私のことを愛してると言ってくれた。
ーーー身体は取り替えられてしまっていたとしても、心は変えられないから、貴方はあなただよと言ってくれた。
ーーー歪くん、大好き。私と出会ってくれて、ありがとうね。
一等綺麗な表情で、笑うから。私は身を焦がすと知りながら近寄ってしまって…まんまとその通り焼かれてしまって。そんな君からの愛を貰えていることが、いまだに夢見心地だなんて、気づいていないでしょう?
とく、とく、と胸の音が近くで聞こえるような気さえしてー…。今彼女も同じ様に胸の音が鳴ってくれているのだろうか。
「帰ろう?それで今日はずっと二人で一緒にいよ。……ね、わたしのかわいい歪くん、二人で良いことしようね」
「うん……♡一緒がいい……♡すきだよ名前ちゃん…♡あっ♡硬くなっちゃうよぉ♡」
下腹部に血液が溜まっていくのがわかる。名前ちゃんといるとどうにも我慢のブレーキが壊れてしまいがちなのに、彼女に手綱を握られて、優しく優しく心を抱かれる度に、身体が邪魔になるような感覚に陥る。
もっと近付いて、君と二人で混ざり合って溶け合えたらいいのに、って思ってしまうんだ。
「あっ、まだだーめ、我慢して?お家に着いてから、ね。」
「あ♡こんなの生殺しッ♡………焦らすなんて……♡はあ……意地悪だなぁ…名前ちゃん」
「意地悪されるの、嫌い?」
「〜〜♡……君からもらうものは、痛いのも、悲しいのも、嬉しいのも………全部、だいすき…♡」
「ふふっ…知ってるよ。」
陰茎が緩く立ち上がるが、彼女の荷物を持ち、それとなく隠す。
彼女の家までの帰宅所要時間は30分ほど。
早く2人っきりになりたくて教室のドアを強くスライドした。
バンッ!と勢いづいた大きな音に、「わっ!」と驚いた名前ちゃんが可愛くって、私はフフ、と笑みをこぼした。
驚かせたくせに、と少しムッとした彼女のご機嫌を取るために早足で帰ろう。
家についたら彼女の匂いのする部屋で、甘くしなだれながら肩を寄せ合って、そうしてあの柔らかく赤い、私にだけ甘い唇に噛みつくようにキスをして、私専用の毒薬で酩酊して幸福を貪るんだ。
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