理屈じゃないの
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最原くんはとても親身になって私の話を聞いてくれた。相槌をつきながら、色んなことを言ってくれた。
「私、もうなんて言ったらいいか、わかんなくて、」
「うん、」
「小吉があんなに怒るの、初めてだったし」
「……王馬くんは、名字さんが自分から離れていくことが怖かったんじゃないかな?」
「え……?」
最原くんの言った言葉に戸惑いを隠せない。だって小吉は言葉のナイフで私の心をずたずたに切り裂いて来たくせに、私が離れるのが怖いだなんて、そんな馬鹿な。
そんな私の動揺をよそに最原くんは続けて言った。
「実際、王馬くんから直接聞いたわけじゃないから、本当に推測でしかないんだけど………。
怖いから、自分から突き放したように聞こえたな。」
「ど、ういう、こと……?」
「2人は生まれた時からずっと一緒なんだよね?名字さんは、王馬くんに彼女が出来た時とか、どう思った?」
小吉に彼女が出来た時。私以外の女の子が彼の隣に立つと知った時、その時私は確かに不快感を催していた。
最原くんの澄んだ瞳に、今は、これだけは素直に話しておこうと思った。
「ちょっとだけ、嫌だった……双子の片割れが、取られたような気がして」
「王馬くんもそう思ったんじゃないかな。名字さんが自分以外の人の事で悩むのが面白くなかったんだよ。」
「そう、なのかな」
「きっとそうだよ。僕は兄弟がいないからわからないけど、兄弟喧嘩みたいな感じじゃないかな?」
そう言われて、なんだか腑に落ちないと思っていたのが顔に出ていたのか最原くんは自分の頬を指でかいて苦笑いを零した。
「あくまで僕の推測だから、」
と、フォローを入れてくれたがそれは正直要らない気遣いだった。
膝の上で握った手を見つめるように視線を落とすと、その手に最原くんが手を重ねて来た。顔を上げて最原くんを見ると、あの時と同じ様な視線で私を見つめていた。
途端に気恥しくなる。包まれた手は暖かくて、大きさから男女であることを再確認してしまう。最原くんの手は綺麗で華奢に見えて意外と骨ばった手だった。
「その、僕は名字さんの味方だし、いつでも頼ってくれると嬉しい……僕じゃ頼りないかもしれないけど、」
「そんなことない。……話聞いてくれてありがと」
「うん……」
目線を逸らすタイミングを見失い、暫くの間ただ見つめ合う時間があった。耳の奥から心臓の音が聞こえてるようだった。
まだ、好きかどうかもわからないのにこうして利用している自分がうす汚い人間に思えてさっと目線を逸らした。
「ご、ごめんなさい」
きっと最原くんは一体何の謝罪なのかわからないだろう。
そんな私の口からポロッと零れ落ちた言葉に最原くんは優しい声で受け答えをする。
「それは、この前の話の返事?」
「えっと……」
自分でもさっきのは告白への返事なのか、それとも最原くんを良いように利用していることへの謝罪なのか、はたまたなんの意味もないのか、自分の気持ちが自分で分からなかった。
「……やっぱり、喧嘩の原因って僕?」
「それ、は…………」
最原くんには喧嘩したことを話したけど、喧嘩の原因が『男の子の気になる人がいる』とは言わなかった。
なにせその気になる人は目の前にいる最原くんな訳だし、『たまたま人間関係で悩んでたら不機嫌になった小吉とお互い衝突しあった』と言って、小吉に言われた事を要所要所掻い摘んで話したのだ。
結局それは意味をなさず、バレてしまっていた。言葉にするのが心苦しくて1回だけ頷くと最原くんは少し納得したように、しかし少しだけ口角をあげて笑った。
「不謹慎かもしれないけど、ちょっと嬉しいな。名字さんが僕のことで悩んでるのは。あ、いや、その、困らせたい訳じゃないんだけど、好きな人にアリかナシか悩んでもらえるってまだ望みがあると言うか……」
「え、と」
「……ごめん、僕何言ってるんだろう。これじゃ結局困らせちゃってるよね。」
「……。」
最原くんの言葉にまた驚いてしまう。なんでこんな私なんかに素直に直球に思いを伝えてくれるのか分からなかった。
私の才能は最原くんや小吉に比べて、言葉を選ばずに言えばクソみたいなものだし、見た目も特別可愛いわけでもスタイルいいわけでもない。なんで、こんなに最原くんは寄り添ってくれるのかが不思議でしょうがない。
「だから、名字さんが王馬くんと仲直り出来るように、僕も手伝うから、いつもみたいに笑ってよ。悔しいけど、今の僕じゃ王馬くんと一緒にいる時の笑顔にさせてあげられないから、」
「さ、最原くん、そんな事言うキャラだったの……?」
優しい最原くんは仲直りの手伝いまでしてくれるらしい。普通なら仲直りなんてさせずにそのまま奪い去るのが少女漫画やドラマの定番だけれど、探偵としては問題ごとは解決させなければ気が済まないのかもしれない。かなり照れることを言われたのでそう思わないとこれから先最原くんを見る度に恥ずかしくなりそうだ。
「ごめん、結構浮かれてるのかも知れない。名字さんの心の内をこれで少し知れたから。」
「?」
「この前も話したと思うけど、人と距離があるし、あんまり心を許してないのかと思ってて。……もしかしたら、王馬くんは全部気付いてたのかもね。名字さんが無意識的に王馬くんを優先しちゃう事に」
「無意識的に……?」
最原くんの言葉に反応してしまう。私が無意識的に小吉を優先していたってどういうことなのだろうか。
「なにかするにも『小吉がいいならそれでいいんじゃない』とか、『別にどっちでもいい。小吉が好きな方にすれば?』とか…………結構多かったよ?」
「うそ、そうなんだ……」
「うん、だから、王馬くんは名字さんから自分が何をしたいか、どう思ってるか、そう言うのが聞きたかったのかも知れないね。」
「私の意思を、知りたかったってこと……?」
「うん、きっと。そう考えるとわかりやすいよ。だって双子みたいに育ってたんだよね?無意識的に王馬くんが上で、名字さんが下の関係が嫌だったのかも。誰よりも対等でいたかったんだよ」
そう言われてもなんて顔をして小吉と向き合えばいいのか私にはもう分からず、時間だけが過ぎていった。申し訳ないことにそのまま最原くんと途中まで帰宅することになった。
今朝よりも重たい足取りで歩く。
ため息を深く吐くと最原くんは背中をぽんぽんと優しく叩いてくれた。
「私、もうなんて言ったらいいか、わかんなくて、」
「うん、」
「小吉があんなに怒るの、初めてだったし」
「……王馬くんは、名字さんが自分から離れていくことが怖かったんじゃないかな?」
「え……?」
最原くんの言った言葉に戸惑いを隠せない。だって小吉は言葉のナイフで私の心をずたずたに切り裂いて来たくせに、私が離れるのが怖いだなんて、そんな馬鹿な。
そんな私の動揺をよそに最原くんは続けて言った。
「実際、王馬くんから直接聞いたわけじゃないから、本当に推測でしかないんだけど………。
怖いから、自分から突き放したように聞こえたな。」
「ど、ういう、こと……?」
「2人は生まれた時からずっと一緒なんだよね?名字さんは、王馬くんに彼女が出来た時とか、どう思った?」
小吉に彼女が出来た時。私以外の女の子が彼の隣に立つと知った時、その時私は確かに不快感を催していた。
最原くんの澄んだ瞳に、今は、これだけは素直に話しておこうと思った。
「ちょっとだけ、嫌だった……双子の片割れが、取られたような気がして」
「王馬くんもそう思ったんじゃないかな。名字さんが自分以外の人の事で悩むのが面白くなかったんだよ。」
「そう、なのかな」
「きっとそうだよ。僕は兄弟がいないからわからないけど、兄弟喧嘩みたいな感じじゃないかな?」
そう言われて、なんだか腑に落ちないと思っていたのが顔に出ていたのか最原くんは自分の頬を指でかいて苦笑いを零した。
「あくまで僕の推測だから、」
と、フォローを入れてくれたがそれは正直要らない気遣いだった。
膝の上で握った手を見つめるように視線を落とすと、その手に最原くんが手を重ねて来た。顔を上げて最原くんを見ると、あの時と同じ様な視線で私を見つめていた。
途端に気恥しくなる。包まれた手は暖かくて、大きさから男女であることを再確認してしまう。最原くんの手は綺麗で華奢に見えて意外と骨ばった手だった。
「その、僕は名字さんの味方だし、いつでも頼ってくれると嬉しい……僕じゃ頼りないかもしれないけど、」
「そんなことない。……話聞いてくれてありがと」
「うん……」
目線を逸らすタイミングを見失い、暫くの間ただ見つめ合う時間があった。耳の奥から心臓の音が聞こえてるようだった。
まだ、好きかどうかもわからないのにこうして利用している自分がうす汚い人間に思えてさっと目線を逸らした。
「ご、ごめんなさい」
きっと最原くんは一体何の謝罪なのかわからないだろう。
そんな私の口からポロッと零れ落ちた言葉に最原くんは優しい声で受け答えをする。
「それは、この前の話の返事?」
「えっと……」
自分でもさっきのは告白への返事なのか、それとも最原くんを良いように利用していることへの謝罪なのか、はたまたなんの意味もないのか、自分の気持ちが自分で分からなかった。
「……やっぱり、喧嘩の原因って僕?」
「それ、は…………」
最原くんには喧嘩したことを話したけど、喧嘩の原因が『男の子の気になる人がいる』とは言わなかった。
なにせその気になる人は目の前にいる最原くんな訳だし、『たまたま人間関係で悩んでたら不機嫌になった小吉とお互い衝突しあった』と言って、小吉に言われた事を要所要所掻い摘んで話したのだ。
結局それは意味をなさず、バレてしまっていた。言葉にするのが心苦しくて1回だけ頷くと最原くんは少し納得したように、しかし少しだけ口角をあげて笑った。
「不謹慎かもしれないけど、ちょっと嬉しいな。名字さんが僕のことで悩んでるのは。あ、いや、その、困らせたい訳じゃないんだけど、好きな人にアリかナシか悩んでもらえるってまだ望みがあると言うか……」
「え、と」
「……ごめん、僕何言ってるんだろう。これじゃ結局困らせちゃってるよね。」
「……。」
最原くんの言葉にまた驚いてしまう。なんでこんな私なんかに素直に直球に思いを伝えてくれるのか分からなかった。
私の才能は最原くんや小吉に比べて、言葉を選ばずに言えばクソみたいなものだし、見た目も特別可愛いわけでもスタイルいいわけでもない。なんで、こんなに最原くんは寄り添ってくれるのかが不思議でしょうがない。
「だから、名字さんが王馬くんと仲直り出来るように、僕も手伝うから、いつもみたいに笑ってよ。悔しいけど、今の僕じゃ王馬くんと一緒にいる時の笑顔にさせてあげられないから、」
「さ、最原くん、そんな事言うキャラだったの……?」
優しい最原くんは仲直りの手伝いまでしてくれるらしい。普通なら仲直りなんてさせずにそのまま奪い去るのが少女漫画やドラマの定番だけれど、探偵としては問題ごとは解決させなければ気が済まないのかもしれない。かなり照れることを言われたのでそう思わないとこれから先最原くんを見る度に恥ずかしくなりそうだ。
「ごめん、結構浮かれてるのかも知れない。名字さんの心の内をこれで少し知れたから。」
「?」
「この前も話したと思うけど、人と距離があるし、あんまり心を許してないのかと思ってて。……もしかしたら、王馬くんは全部気付いてたのかもね。名字さんが無意識的に王馬くんを優先しちゃう事に」
「無意識的に……?」
最原くんの言葉に反応してしまう。私が無意識的に小吉を優先していたってどういうことなのだろうか。
「なにかするにも『小吉がいいならそれでいいんじゃない』とか、『別にどっちでもいい。小吉が好きな方にすれば?』とか…………結構多かったよ?」
「うそ、そうなんだ……」
「うん、だから、王馬くんは名字さんから自分が何をしたいか、どう思ってるか、そう言うのが聞きたかったのかも知れないね。」
「私の意思を、知りたかったってこと……?」
「うん、きっと。そう考えるとわかりやすいよ。だって双子みたいに育ってたんだよね?無意識的に王馬くんが上で、名字さんが下の関係が嫌だったのかも。誰よりも対等でいたかったんだよ」
そう言われてもなんて顔をして小吉と向き合えばいいのか私にはもう分からず、時間だけが過ぎていった。申し訳ないことにそのまま最原くんと途中まで帰宅することになった。
今朝よりも重たい足取りで歩く。
ため息を深く吐くと最原くんは背中をぽんぽんと優しく叩いてくれた。