理屈じゃないの
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最原くんからあの衝撃的な告白から暫くたっても、彼は度々私に声をかけてくれるようになった。
そんな変化に若干動揺しつつ対応をしているのだけど、その動揺は探偵である最原くんにはあっさりとバレていて、「困らせたい訳じゃないから、いつも通りの名字さんでいてよ」と言われてしまった。
…努めて自然にいようとおもっているのだけれど、これが結構難しい。
なにせ同級生の男の子(しかも憎からず思っている人なわけだし)に女の子として見ているだなんて言われてしまったのだ。そんな経験今まで全く無かったから、何をどうしていいのかわからない。何が自然な対応になる?気を遣わせないようにしたいのに、その方法が対人関係初心者の私にはまるでわからない。
小吉といた時は、私は自分が女子である事も忘れるような扱いが普通だった。
最原くんのあの暖かい眼差し、恋に浮かされているような瞳で見つめられて、胸の奥に小さい火が灯ったようで、ようやく自分が女である事を自覚せざるを得なかった、のに。コミュ障にはハードルが高すぎる。
色々こんがらがってきた頭の中を綺麗にしたくて、悩んでもきっと答えは出ないのに最近はひたすら悩み続けている。
色々考えていたらいきなり肩に衝撃が走った。痛さに顔を歪めて右肩の方を見れば小吉が不機嫌そうに顔を歪めて私に肩パンをカマしたようだった。
「最近どうしちゃった訳?」
「え?」
「ずーっとそんな辛気臭いブッサイクな面してさぁ!」
不機嫌そうと言うか不機嫌な小吉はなんだか珍しいと言うか、こんなに私に毒をと言うか感情的と言おうか、当たりが強いのは初めてな気がする。
そもそも一緒にいるのにこんなにぼーっと最原くんのことを考えているからいけないんだろうけど……。
「……ごめん」
素直に謝った。一応笑顔で。こんなんじゃきっとバレるだろうけど、それでも笑わずにいられなかった。もちろん小吉はそれを見て更に顔を歪めた。表情筋どんだけ動くの、その表情を見れば貼り付けた笑顔だと即刻バレてしまったらしい。
「だーかーらーその顔!マジでどうにかしろって!」
「だから、ごめんって」
なんでこんなに小吉が怒っているのかはわからないけど、皆たまにある何故かむしゃくしゃする時なのだろうか。
女が生理でイライラする、みたいな感じで。
……いやないか。だって小吉は男だし。単純に虫の居所が悪いだけなのかもしれない。そうだとすると八つ当たりか。
勘弁してよ……、と考えていると、小吉の次の言葉で思考が固まってしまった。
「恋煩いならもっと可愛く煩ってよね!」
無言で固まる私に小吉は冷たい眼差しを浴びせた。それにもまた固まってしまう。そんな目で、今まで見られたことも無かった。なんでそんな、他人みたいな顔して見てくるんだろう。
私は、小吉の幼馴染で双子のようなもので……っていうか、私別に恋なんてしてないのに、なんで固まっちゃったんだろう。なんであの時の最原くんの声を思い出してしまったんだろう。
何も答えない私に痺れを切らした小吉が私を覗きこんできた。なんだか、目をそらしたらいけない気がした。
「……へー?マジで恋煩いなの?好きな人出来ちゃったの?マジで?」
「……ちがう、と、思う」
辛うじて言えた言葉は震えていて説得力のかけらもない言葉になってしまった。
小吉の瞳に浮かぶ私の顔はなんだか頼りない顔をしている。目も揺らいでいるような、そんな気がする。
「……目は口ほどに物を言うって、お馬鹿さんな名前にも分かるよね?」
それはもちろん小吉も感じていたようで、『嘘をつくなよ』と釘を刺されたような気がする。
もうここまで言われてしまえば私は誤魔化すことも出来なくなる。
「恋煩いって言うか……まあ人間関係で悩んでるけど……」
「男のことでしょ?だから動揺したんだよね?」
「まあ、そうだけど……。」
男のこと、そう言われるとなんだか不適切な関係が世間に暴露されたかのようだ。
そんなことないはずなのに。なんでこんなに申し訳ない気持ちになるのか。