足りない歩幅
名前
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あーでもないこーでもないと言い続けていれば、間に挟まれた最原くんが苦笑いを零しながら「少し落ち着こうよ二人共」と声を掛けた。
最原くんに悪いことをしてしまった。申し訳なさに謝ると「気にしなくていいよ」と微笑む。全く最原くんは人間が出来ているなぁ。
「最原ちゃんが俺の味方してくれれば、名前を悪者に出来たのにー!」
「王馬くんは悪の総統なんだよね?それって……どうなの?」
私を悪者にしようとする小吉に、悪の総統の他に悪者がいていいの?と最原くんが聞けば小吉は馬鹿にしたように笑った。
「最原ちゃんってば言葉をそのまま受け取りすぎ!自分が悪だって言えば全て悪になるわけじゃないでしょ~」
「うーん……そうなんだけどさ……」
「最原くん、小吉の言うこと間に受けてたら身が持たないよ」
真面目な最原くんが考え込み始めたので、アドバイスにならないアドバイスをすると、小吉は笑って「そろそろ仕事しなきゃいけないから、俺はもう行くね!」と駆け出していった。
「え?お、王馬くん!?」
「あー…ほんと巻き込んでゴメン最原くん。気にしないで」
慌てて止めようとする最原くんに声をかけるといいの?といった様な視線がこちらを向いた。笑って再度気にしないように伝えると渋々と言った様子で曖昧に微笑んだ。
小吉が離れていくのをなんだか他人事のように感じた。少しずつ、距離が開いていく。なんだか今の私達のこころみたい、なんてキャラにもないことを思ってしまった。
…ずっと隣にいたなんて幻想で元々これだけ離れていたのかも知れないって思うとまたあの痛さがぶり返してくる。
「名字さん、大丈夫?」
「えっ?」
「最近、あまり元気がなかったから……」
小吉が駆け出していった方を(足が早いからもう見えなくなってしまったけど)見ていれば最原くんが心配そうにこちらを見ていた。
元気がない、なんて小吉にもバレていなかったというのに、付き合いの浅い最原くんにバレるなんてちょっと以外だった。
驚きを隠せずにいると慌てたように
「もちろん、僕の勘違いなら申し訳ないんだけどさ、」
と付け足していた。………それを言ったら、やっぱりいつもより元気がないって思ってるって肯定するのと同じだよ、最原くん。
「いや、正直空元気だったかもね」
ぽつり、と本音が零れた。
最原くんは私が素直にこういう事を言うと思っていなかったのか、ピクリと瞳を瞬かせる。
あからさまに『驚いています』と表情で教えてくれる。
探偵なのにそんなに顔に出していいの?と考えてしまって途端に笑けてきた。
「ふふふっ」
突然人の顔を見て笑い出した私に最原くんは更に驚いた顔をしていた。
「えっな、なんで笑うの!?」
「いや、だって……あははっめっちゃ驚いてるから……くっ」
「そ、そんなに笑わなくても……!」
「ふっふふ……ね、あっちのベンチ座っていい?お腹痛い……!」
「いいけど、いつまで笑ってるの……!?」
最近外に置かれた真新しいベンチに移動してからもツボに入って笑い続ける私が落ち着くまで、最原くんは根気よく待ってくれた。その後最原くんの言った言葉に、やっぱり彼はちゃんと探偵で、周りをしっかり見ているんだなぁと先ほどの認識を改めた。
「気分を悪くしないで聞いて欲しいんだけど……名字さんって、王馬くん以外にはあまり興味が無さそうって言うか、淡白と言うか……」
申し訳なさそうに切り込むその内容は正直自分でも常に思っていたことだったので、ただ一言そうだね、とだけ返した。
それを受けた最原くんは話しても大丈夫な事柄だと分かってくれたようで、そのまま話を続けてくれた。
「けど、最近はほかの人とか、あとは1人でいることが増えてきたし……王馬くんも前よりもフラフラしてる気がして、ちょっと心配だったんだ。」
「最原くん、やっぱ探偵さんだね。よく周りを見てるよ、本当に。」
「えっ?」
「空元気なのバレたの、初めてかも。」
「……!」
「ま、でも気にしないで。大丈夫だから。」
「む、無理だよ、そんなの……!」
最原くんが声を荒らげることは初めてじゃないにしても、私に対しては初めてでどうしたのかと心配になる。
なにか彼を怒らせてしまったのだろうか。不安げに私が見ていた事に気付いた彼は慌てていた。
「あ、その……ごめん。でも、僕は気にしないなんて、無理だよ」
「……優しいね、最原くん」
最原くんは、優しい人だ。それはもちろんクラスのみんなも知っている。
だからこそ小吉も最原くんにちょっかいをかけても嫌われないと分かっているのかもしれない。それだけの、安心感がある。
寂しがり屋の小吉と、それに構ってあげる優しい最原くん。
そんな二人が仲良く(最原くんの本心はわからないけど)話しているのを見るのが私は好きだった。
まあ、そんな思いやりがあって、ちゃんと人のことを考えてくれる最原くんがこんな状況をみすみす逃がすはずもないか、と1人納得していると、
「それは、違うよ」
すっぱりと撃たれた私の言葉に疑問が残る。優しくないって、一体どういう事だろうか。彼が優しく無ければ、一体全体、誰が優しいのか。ハテナマークを頭に浮かべた私に最原くんはやや緊張した面持ちで話を続けた。
「優しいんじゃなくて……優しくしたいんだ、名字さんに」
この言葉の真意が分からないほど、私も子供では無かった。
最原くんに悪いことをしてしまった。申し訳なさに謝ると「気にしなくていいよ」と微笑む。全く最原くんは人間が出来ているなぁ。
「最原ちゃんが俺の味方してくれれば、名前を悪者に出来たのにー!」
「王馬くんは悪の総統なんだよね?それって……どうなの?」
私を悪者にしようとする小吉に、悪の総統の他に悪者がいていいの?と最原くんが聞けば小吉は馬鹿にしたように笑った。
「最原ちゃんってば言葉をそのまま受け取りすぎ!自分が悪だって言えば全て悪になるわけじゃないでしょ~」
「うーん……そうなんだけどさ……」
「最原くん、小吉の言うこと間に受けてたら身が持たないよ」
真面目な最原くんが考え込み始めたので、アドバイスにならないアドバイスをすると、小吉は笑って「そろそろ仕事しなきゃいけないから、俺はもう行くね!」と駆け出していった。
「え?お、王馬くん!?」
「あー…ほんと巻き込んでゴメン最原くん。気にしないで」
慌てて止めようとする最原くんに声をかけるといいの?といった様な視線がこちらを向いた。笑って再度気にしないように伝えると渋々と言った様子で曖昧に微笑んだ。
小吉が離れていくのをなんだか他人事のように感じた。少しずつ、距離が開いていく。なんだか今の私達のこころみたい、なんてキャラにもないことを思ってしまった。
…ずっと隣にいたなんて幻想で元々これだけ離れていたのかも知れないって思うとまたあの痛さがぶり返してくる。
「名字さん、大丈夫?」
「えっ?」
「最近、あまり元気がなかったから……」
小吉が駆け出していった方を(足が早いからもう見えなくなってしまったけど)見ていれば最原くんが心配そうにこちらを見ていた。
元気がない、なんて小吉にもバレていなかったというのに、付き合いの浅い最原くんにバレるなんてちょっと以外だった。
驚きを隠せずにいると慌てたように
「もちろん、僕の勘違いなら申し訳ないんだけどさ、」
と付け足していた。………それを言ったら、やっぱりいつもより元気がないって思ってるって肯定するのと同じだよ、最原くん。
「いや、正直空元気だったかもね」
ぽつり、と本音が零れた。
最原くんは私が素直にこういう事を言うと思っていなかったのか、ピクリと瞳を瞬かせる。
あからさまに『驚いています』と表情で教えてくれる。
探偵なのにそんなに顔に出していいの?と考えてしまって途端に笑けてきた。
「ふふふっ」
突然人の顔を見て笑い出した私に最原くんは更に驚いた顔をしていた。
「えっな、なんで笑うの!?」
「いや、だって……あははっめっちゃ驚いてるから……くっ」
「そ、そんなに笑わなくても……!」
「ふっふふ……ね、あっちのベンチ座っていい?お腹痛い……!」
「いいけど、いつまで笑ってるの……!?」
最近外に置かれた真新しいベンチに移動してからもツボに入って笑い続ける私が落ち着くまで、最原くんは根気よく待ってくれた。その後最原くんの言った言葉に、やっぱり彼はちゃんと探偵で、周りをしっかり見ているんだなぁと先ほどの認識を改めた。
「気分を悪くしないで聞いて欲しいんだけど……名字さんって、王馬くん以外にはあまり興味が無さそうって言うか、淡白と言うか……」
申し訳なさそうに切り込むその内容は正直自分でも常に思っていたことだったので、ただ一言そうだね、とだけ返した。
それを受けた最原くんは話しても大丈夫な事柄だと分かってくれたようで、そのまま話を続けてくれた。
「けど、最近はほかの人とか、あとは1人でいることが増えてきたし……王馬くんも前よりもフラフラしてる気がして、ちょっと心配だったんだ。」
「最原くん、やっぱ探偵さんだね。よく周りを見てるよ、本当に。」
「えっ?」
「空元気なのバレたの、初めてかも。」
「……!」
「ま、でも気にしないで。大丈夫だから。」
「む、無理だよ、そんなの……!」
最原くんが声を荒らげることは初めてじゃないにしても、私に対しては初めてでどうしたのかと心配になる。
なにか彼を怒らせてしまったのだろうか。不安げに私が見ていた事に気付いた彼は慌てていた。
「あ、その……ごめん。でも、僕は気にしないなんて、無理だよ」
「……優しいね、最原くん」
最原くんは、優しい人だ。それはもちろんクラスのみんなも知っている。
だからこそ小吉も最原くんにちょっかいをかけても嫌われないと分かっているのかもしれない。それだけの、安心感がある。
寂しがり屋の小吉と、それに構ってあげる優しい最原くん。
そんな二人が仲良く(最原くんの本心はわからないけど)話しているのを見るのが私は好きだった。
まあ、そんな思いやりがあって、ちゃんと人のことを考えてくれる最原くんがこんな状況をみすみす逃がすはずもないか、と1人納得していると、
「それは、違うよ」
すっぱりと撃たれた私の言葉に疑問が残る。優しくないって、一体どういう事だろうか。彼が優しく無ければ、一体全体、誰が優しいのか。ハテナマークを頭に浮かべた私に最原くんはやや緊張した面持ちで話を続けた。
「優しいんじゃなくて……優しくしたいんだ、名字さんに」
この言葉の真意が分からないほど、私も子供では無かった。