踏み越えたい一線
名前
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「え……?」
「だからさ、好きな人出来ちゃったかもしれないんだよ……どうしよう……」
口から出た間抜けな声は見事に小吉に拾われてしまった。頭を掻きながら悩みを吐露するか細い小吉の声はなんだか耳に入らず、右から左へと受け流してしまう。そういえば昔、そんな歌を歌っていた芸人がいたな、なんてくだらない事を考えていると、小吉は疑り深い目で「ちょっと聞いてる?」と視線を寄越してきた。
「ごめんちょっと考え事してた」
「えー!俺がこんなに悩んでるのに!?」
「ごめんごめん、で、好きな人だっけか」
「そうなんだよー!悪の総統である俺が恋とかチープな少女漫画かよって笑ってよ!」
「わー、悪の総統である小吉が恋とか「え?本当に言うの?」だって言えって言ったからさ」
「もー、嘘に決まってんじゃん」
「知ってる」
「性格わるーい」
「昔から知ってるでしょ」
昔から変わらないやり取りのはずなのに、何かが違う気がして変な感じがする。
そもそも小吉が好きな人できた、なんて言うのは初めてだなと会話しながら思い出した。
昔から彼女は出来てもすぐに「飽きた」なんて言って別れる小吉に「クズ野郎だね」「それでも俺と一緒にいてくれるんでしょ?」「まあね」なんて会話をするのが常だった。
しかし、今回ばかりは彼は今まで言ったことのないことを言った。
「好きな人が出来たかもしれない」と。
つまり、本気になれる人が出来たのだと。でなければ、こんな風に私に「好きな人ができた」なんておっかなびっくり告げてこない。
正直に言わないと小吉には全てバレるから心の整理だけしておこう。
正直ショックだ。まさか小吉に好きな人が出来るだなんて、夢のまた夢だと思っていた。かと言って、私が小吉を恋愛感情で見ているかと言えば話は別だ。見ていないし、これから見る予定もない。ただ、双子の片割れが素知らぬ馬の骨にあっさり持っていかれると腹が立つと聞く。恐らく私が感じているモヤモヤはそれだ。
とりあえず誰が好きなのか聞いてこのモヤモヤを吹っ飛ばさなければならない。
そう思って小吉を無言で見つめるとなにか感じたのか物凄く嫌そうな顔で何?と一言。
「その好きな人って誰?」
「えーっ?それ聞いちゃうかんじー?」
「なにその女子高生テンション」
「だって恥ずかしいじゃん、なんか、」
「はいはい、で、誰」
謎の女子高生テンションで誤魔化そうとする小吉に突っ込んで聞いていくと私がここまで食い下がらないのに不思議に思ったのか焦っていた。
「なんでそんな興味あるの……」
「そりゃあ一応昔からずっと傍にいた訳だし」
「……そうだよね~。ホントずっと昔からの付き合いだし、気になるか。俺も名前が好きな人できたなんて言ったら気になっちゃうもん」
「いいから早く吐きなよ」
「たはー!バレてたか!」
未だ誤魔化そうとする小吉にトドメと言わんばかりに睨みつけながら聞くと、ようやく好きな人(気になってる人?)の名前を吐いた。
「 ちゃん……」
少し照れくさそうに言う小吉に『ああ、本気で好きなんだな』と思ってしまった。あんな顔少し前までは絶対に見せなかったと言うのに。恋をすると丸くなるのはあながち間違いではないようだ。
しかしまぁその好きな人に近付くにはなかなか大変そうだ。
「へー………セコム付いちゃってるけど、どうするの」
「そうなんだよ~!まっ、でも俺だからね!どうにかしちゃうよね!」
「そう、頑張れ」
ぼかしていたけど、結局はその子が好きだと分かって、私に背中を押してもらいたかったのか、嬉しそうに笑って「話し終わり!」と言った。
プァンタを開けてゴクゴクと喉を鳴らす小吉に一声かけて教室から出た。
その瞬間に何故か小吉の言った好きな人の声が脳裏に蘇った。
モヤモヤは何故か先程よりも大きくなっているように感じた。
「だからさ、好きな人出来ちゃったかもしれないんだよ……どうしよう……」
口から出た間抜けな声は見事に小吉に拾われてしまった。頭を掻きながら悩みを吐露するか細い小吉の声はなんだか耳に入らず、右から左へと受け流してしまう。そういえば昔、そんな歌を歌っていた芸人がいたな、なんてくだらない事を考えていると、小吉は疑り深い目で「ちょっと聞いてる?」と視線を寄越してきた。
「ごめんちょっと考え事してた」
「えー!俺がこんなに悩んでるのに!?」
「ごめんごめん、で、好きな人だっけか」
「そうなんだよー!悪の総統である俺が恋とかチープな少女漫画かよって笑ってよ!」
「わー、悪の総統である小吉が恋とか「え?本当に言うの?」だって言えって言ったからさ」
「もー、嘘に決まってんじゃん」
「知ってる」
「性格わるーい」
「昔から知ってるでしょ」
昔から変わらないやり取りのはずなのに、何かが違う気がして変な感じがする。
そもそも小吉が好きな人できた、なんて言うのは初めてだなと会話しながら思い出した。
昔から彼女は出来てもすぐに「飽きた」なんて言って別れる小吉に「クズ野郎だね」「それでも俺と一緒にいてくれるんでしょ?」「まあね」なんて会話をするのが常だった。
しかし、今回ばかりは彼は今まで言ったことのないことを言った。
「好きな人が出来たかもしれない」と。
つまり、本気になれる人が出来たのだと。でなければ、こんな風に私に「好きな人ができた」なんておっかなびっくり告げてこない。
正直に言わないと小吉には全てバレるから心の整理だけしておこう。
正直ショックだ。まさか小吉に好きな人が出来るだなんて、夢のまた夢だと思っていた。かと言って、私が小吉を恋愛感情で見ているかと言えば話は別だ。見ていないし、これから見る予定もない。ただ、双子の片割れが素知らぬ馬の骨にあっさり持っていかれると腹が立つと聞く。恐らく私が感じているモヤモヤはそれだ。
とりあえず誰が好きなのか聞いてこのモヤモヤを吹っ飛ばさなければならない。
そう思って小吉を無言で見つめるとなにか感じたのか物凄く嫌そうな顔で何?と一言。
「その好きな人って誰?」
「えーっ?それ聞いちゃうかんじー?」
「なにその女子高生テンション」
「だって恥ずかしいじゃん、なんか、」
「はいはい、で、誰」
謎の女子高生テンションで誤魔化そうとする小吉に突っ込んで聞いていくと私がここまで食い下がらないのに不思議に思ったのか焦っていた。
「なんでそんな興味あるの……」
「そりゃあ一応昔からずっと傍にいた訳だし」
「……そうだよね~。ホントずっと昔からの付き合いだし、気になるか。俺も名前が好きな人できたなんて言ったら気になっちゃうもん」
「いいから早く吐きなよ」
「たはー!バレてたか!」
未だ誤魔化そうとする小吉にトドメと言わんばかりに睨みつけながら聞くと、ようやく好きな人(気になってる人?)の名前を吐いた。
「 ちゃん……」
少し照れくさそうに言う小吉に『ああ、本気で好きなんだな』と思ってしまった。あんな顔少し前までは絶対に見せなかったと言うのに。恋をすると丸くなるのはあながち間違いではないようだ。
しかしまぁその好きな人に近付くにはなかなか大変そうだ。
「へー………セコム付いちゃってるけど、どうするの」
「そうなんだよ~!まっ、でも俺だからね!どうにかしちゃうよね!」
「そう、頑張れ」
ぼかしていたけど、結局はその子が好きだと分かって、私に背中を押してもらいたかったのか、嬉しそうに笑って「話し終わり!」と言った。
プァンタを開けてゴクゴクと喉を鳴らす小吉に一声かけて教室から出た。
その瞬間に何故か小吉の言った好きな人の声が脳裏に蘇った。
モヤモヤは何故か先程よりも大きくなっているように感じた。