踏み越えたい一線
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物心がついた幼い頃からずっと一緒にいた王馬小吉の面倒を見るのは、もはや私のライフワークの一部だったと言っても過言ではない。
この世に産声をあげてすぐ新生児室のベッドが隣同士。
さらに入院していた母たちも隣同士の病室で、ここまでくればよくあることと思うが、歳の近い母たちが仲良くなり、
さらに偶然にも自宅が近くでそこから親同士の交流が増え、必然的に私と小吉はペアにされることが多かった。
小吉は私の半身のようであったし、小吉もきっとそう思っていたに違いない。
純粋な幼少期の小吉はとてつもなく可愛くて、私は天使と幼馴染みなのだと鼻高々だったのを思い出す。
今となっては天使なんて生易しいものではなく、まあ悪魔みたいな性格の悪さだけれど、それでも、彼は私の半身で、大切な幼馴染みである事は変わらない。
昔も今も小吉は存外人に構われるのが好きだし構うことも好きだった。
私が「おもちゃかして」と言えば嫌でも絶対に貸してくれたし、逆に私のおもちゃを必要以上に使ってはお母さんに怒られていたこともあるぐらいだった。
怒られてもなお小吉はそういう事をするのを辞めず、度々叱られてはまた満足げに笑う。
この時、私ははたと気付いてしまった。
小吉はとてつもない寂しがりなのだと。
それに気付いてからは小吉にだけは嘘を言わずにいた。
だからこそ側に入れる存在だと自負していたし、なるべく小吉を1人にしないようにしていた。
小吉は純粋故に嘘をつく。それを良しとしない奴らから小吉を守るのも私の仕事だったのだ。
そんな小吉は無関心が怖いから、私のしている事なんて余計なお世話なのかも知れないけど、いつも私に向かって笑っていた。
「名前はつまらなくないね」
「総統様の幼馴染みだからね」
こう返すのもテンプレになってきた。
総統である彼は構ってもらえるように自分の心にキラキラの嘘のを塗装して見てもらえるようにして、 嘘のメッキが剥がれてきたら新しい嘘のペンキで塗り重ねて本性を隠す。
そうして生きていたら彼はいつの間にか狼少年となっていた。
扱いにくい、と称されていたけど本人は得意げだった。扱おうと思われてるだけ彼にとっては構われてることと同義なのだ。
そんな寂しがりの彼は自分の溢れんばかりの寂しさを埋めるように秘密結社を立ち上げた。
DICE、なんてカッコつけた名前を付けたそれで彼は自分の居場所を確立した。それで彼はあのうち震えるような寂しさから身を守ることが出来る。
幸いメンバーも小吉と同じような心持ちの人が多いようだったのでそこは安心している。
ただ釈然と小吉とずっと一緒にいるのは私だと思っていた。
信じて疑わなかった。一緒にいれなくなるなんて太陽が西から昇って東に沈むぐらいには有り得ない事だと。
もちろん希望ヶ峰に入ってからもそうだった。
若干アクの強いメンバーばかりのこの学校は小吉には丁度いいのかもしれない。
私は超高校級の幼馴染。小吉がいなければ存在意義などない下らない才能だった。
もちろん小吉は総統として希望ヶ峰に招集された人間で、私も幼馴染ながら鼻高々に思っていた。
希望ヶ峰で過ごして早くも3ヶ月ほどたった頃、この頃には小吉は最原くんと軽口を叩きあえるぐらいには仲良くなっていて、反対に私は東条や白銀と言う比較的大人しいメンバーと仲良くやっていた頃だった。
「名前借りるよー」
「あら、王馬くん……わかったわ。また後でね、名字さん」
「わっ、ちょっ、ごめん東条~!後でねー!」
小吉が突然私のシャツの首元を引っ張って東条から引き剥がした。
首が絞まって苦しいが、言っても聞かないので締まらないように歩く他ない。
それに、こんなふうに無理やり呼び出す時はなにか悩みがあるか言いたいことがあるかのどちらかだったので、好きなようにさせた。
超高校級の総統の研究教室に連れ込まれ、プァンタを放り投げられる。どうもこれはお茶の代用品のようで、有り難く頂戴する。
ペットボトルの蓋を回せば軽快な酸の抜ける音がした。グレープの香りが鼻に抜ける。小さい頃からずっと好きだよな……と思いながら小吉の言葉を待った。
やがて言いにくそうな小吉が覚悟を決めたように口を開いた。
「俺さ、好きな人出来ちゃったかもしれない……」
青天の霹靂だった。
この世に産声をあげてすぐ新生児室のベッドが隣同士。
さらに入院していた母たちも隣同士の病室で、ここまでくればよくあることと思うが、歳の近い母たちが仲良くなり、
さらに偶然にも自宅が近くでそこから親同士の交流が増え、必然的に私と小吉はペアにされることが多かった。
小吉は私の半身のようであったし、小吉もきっとそう思っていたに違いない。
純粋な幼少期の小吉はとてつもなく可愛くて、私は天使と幼馴染みなのだと鼻高々だったのを思い出す。
今となっては天使なんて生易しいものではなく、まあ悪魔みたいな性格の悪さだけれど、それでも、彼は私の半身で、大切な幼馴染みである事は変わらない。
昔も今も小吉は存外人に構われるのが好きだし構うことも好きだった。
私が「おもちゃかして」と言えば嫌でも絶対に貸してくれたし、逆に私のおもちゃを必要以上に使ってはお母さんに怒られていたこともあるぐらいだった。
怒られてもなお小吉はそういう事をするのを辞めず、度々叱られてはまた満足げに笑う。
この時、私ははたと気付いてしまった。
小吉はとてつもない寂しがりなのだと。
それに気付いてからは小吉にだけは嘘を言わずにいた。
だからこそ側に入れる存在だと自負していたし、なるべく小吉を1人にしないようにしていた。
小吉は純粋故に嘘をつく。それを良しとしない奴らから小吉を守るのも私の仕事だったのだ。
そんな小吉は無関心が怖いから、私のしている事なんて余計なお世話なのかも知れないけど、いつも私に向かって笑っていた。
「名前はつまらなくないね」
「総統様の幼馴染みだからね」
こう返すのもテンプレになってきた。
総統である彼は構ってもらえるように自分の心にキラキラの嘘のを塗装して見てもらえるようにして、 嘘のメッキが剥がれてきたら新しい嘘のペンキで塗り重ねて本性を隠す。
そうして生きていたら彼はいつの間にか狼少年となっていた。
扱いにくい、と称されていたけど本人は得意げだった。扱おうと思われてるだけ彼にとっては構われてることと同義なのだ。
そんな寂しがりの彼は自分の溢れんばかりの寂しさを埋めるように秘密結社を立ち上げた。
DICE、なんてカッコつけた名前を付けたそれで彼は自分の居場所を確立した。それで彼はあのうち震えるような寂しさから身を守ることが出来る。
幸いメンバーも小吉と同じような心持ちの人が多いようだったのでそこは安心している。
ただ釈然と小吉とずっと一緒にいるのは私だと思っていた。
信じて疑わなかった。一緒にいれなくなるなんて太陽が西から昇って東に沈むぐらいには有り得ない事だと。
もちろん希望ヶ峰に入ってからもそうだった。
若干アクの強いメンバーばかりのこの学校は小吉には丁度いいのかもしれない。
私は超高校級の幼馴染。小吉がいなければ存在意義などない下らない才能だった。
もちろん小吉は総統として希望ヶ峰に招集された人間で、私も幼馴染ながら鼻高々に思っていた。
希望ヶ峰で過ごして早くも3ヶ月ほどたった頃、この頃には小吉は最原くんと軽口を叩きあえるぐらいには仲良くなっていて、反対に私は東条や白銀と言う比較的大人しいメンバーと仲良くやっていた頃だった。
「名前借りるよー」
「あら、王馬くん……わかったわ。また後でね、名字さん」
「わっ、ちょっ、ごめん東条~!後でねー!」
小吉が突然私のシャツの首元を引っ張って東条から引き剥がした。
首が絞まって苦しいが、言っても聞かないので締まらないように歩く他ない。
それに、こんなふうに無理やり呼び出す時はなにか悩みがあるか言いたいことがあるかのどちらかだったので、好きなようにさせた。
超高校級の総統の研究教室に連れ込まれ、プァンタを放り投げられる。どうもこれはお茶の代用品のようで、有り難く頂戴する。
ペットボトルの蓋を回せば軽快な酸の抜ける音がした。グレープの香りが鼻に抜ける。小さい頃からずっと好きだよな……と思いながら小吉の言葉を待った。
やがて言いにくそうな小吉が覚悟を決めたように口を開いた。
「俺さ、好きな人出来ちゃったかもしれない……」
青天の霹靂だった。