つめたい仲直り
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喧嘩してから、私は小吉と一緒にいることを辞めた。もう離れて二週間ぐらいになる。
けれど何をしてても『小吉ならこうしただろうな』とか『小吉は秘密子ちゃんにちゃんとアプローチ出来ているのか』とか、いろいろ考えてしまう。最早病気だ。病気。ま、そう考えるとこの病気が完治したら役目 は終わるんだけど……。ただでさえ薄暗く腹の底に溜まっていた淀みがズンと重みを増した。生理中の腰の重さを思い出して、酷く不快だった。
この前、渡り廊下で秘密子ちゃんと小吉が一緒にいる所を見たけれど、前のような小学生じみた嫌がらせはして無くて、ただただ普通に会話をしているようだった。
若干警戒心の解けない秘密子ちゃんに苦戦している小吉の様子がイヤに滑稽で、クスリと笑みがこぼれてしまい、ハッとする。
また見てしまっていた事に気がついて、そんな自分に自己嫌悪。ただ落ち着くために深い溜息を吐けば、隣にいた最原くんが「名字さん、大丈夫…?」声を掛けてくれた。
「あ、うん……ごめん、」
あれから最原くんはよっぽどの事がない限り、私と一緒に行動してくれるようになった。まだ、あの告白に返事をしたわけでもないのでかなり気恥しいのだけど、彼はそれすらも自分を知ってもらえるチャンスだと受け取ってる様だった。
初めてあった時、弱々しい雰囲気で背を丸め、存在 そのものを隠したがって、帽子を目深く被っていた彼とは思えない程、凛々しくなった。
「……全然大丈夫そうな顔してないよ。やっぱり、直球で仲直りしたいって言ったら良いんじゃないかな?」
「そ、そんな、子供みたいな……」
「まだ高校生だし子供だよ、僕達。それに、変になにか考えるだけ無駄な気がするな。王馬くんはそういうの、全部わかっちゃいそうだから」
最原くんのそう言ってくれたけれど、今の私にはとてつもなく難題だ。
これが小学生ぐらいならきっとすぐに謝って、また仲良くしてほしい、と言えただろう。
けど、もう高校生で、大人ではないとはいえ子供かと言われると微妙な歳だ。
私が色々考えて変な顔をしていると最原くんは少し笑って私の眉間をつついた。
「シワ寄ってるよ」
「……やめてよ」
身長差があるので睨み上げると最原くんはまた笑った。仲良くなるにつれて、彼が優しいだけじゃなくて、案外男らしくてそして気遣い屋だがちょっと意地悪な1面を見ることが増えて、なんだか心がざわざわする。不思議と不愉快ではないから、余計に。
なんだか視線を感じてそちらの方を見てみればばっちりと小吉と目が合い、お互いが驚いて目を逸らす。恐らく全く同じタイミングでしてしまったであろう行為になんだか寂しくなる。
けれどお互い特に声を掛け合うことも無く、その場を去ることした。今はなんて言えばいいのかわからない。正解は何。わからない。
最原くんの腕を掴んで、少し遠回りになるけど別の廊下から移動教室をする事にした。とにかく小吉の前から消えたかった。
その時小吉は驚いていますと大袈裟な程に顔に出していてなんだか置いていかれた子供みたいな、寂しそうな顔をしていた。……せっかく秘密子ちゃんといるのに、私のことなんて気にしなければいいのに。そんなんだからいつまで経っても変な女にしか引っかからないんだよ。なんて下らないことを思っていて、つい無言になってしまう。
「え、名字さん?」
「…………。」
いきなり腕を掴まれて驚いた最原くんを何も言わずに連れて歩く。
最原くんはわたわたと慌ててはいるものの腕を振り払おうとはせず、されるがまま私に引き摺られていた。
丁度角を曲がった所で最原くんに話しかけた。
「急に引っ張ってごめんね」
そう言って組んでいた腕を話せば少し残念そうな顔で最原くんは言った。
「あ、いや、いいよ、別に。その……ちょっと嬉しかったし。でも、他の人にはして欲しくない、かな」
嬉しい、けどほかの人にはやって欲しくない。それはわかりやすい好意の言葉だった。やはり何度言われても慣れないなあ、と思いながら苦笑いで言葉を返す。
「……やっぱ最原くん変わったね。」
「名字さんのせいかもね」
「え、私のせい?」
あははと軽い笑い声が長い廊下に軽く響いた。お互い視線が交じって、笑い合う。なんてことはない、日常の一コマ。最原くんには何を言っても大丈夫な気がする。この数週間の間に、私は最原くんをすっかり信頼してしまったんだろう。……最原くんも、私のこと一番に信頼してくれたらイイな、なんて考えて………。
一番。私の一番ってずっと小吉だったんだよね。それで、小吉の一番も私だった。ハズ。…また思考を巡らす。
いつから一番じゃなくなったんだろう。
あの喧嘩で、いや、もっと前から……小吉がお遊びのように恋人を作った時から、小吉から私への明確な好意と言おうか、心が見えなくなったから、私は小吉を遠ざけてしまったのかな、
けれど何をしてても『小吉ならこうしただろうな』とか『小吉は秘密子ちゃんにちゃんとアプローチ出来ているのか』とか、いろいろ考えてしまう。最早病気だ。病気。ま、そう考えるとこの病気が完治したら
この前、渡り廊下で秘密子ちゃんと小吉が一緒にいる所を見たけれど、前のような小学生じみた嫌がらせはして無くて、ただただ普通に会話をしているようだった。
若干警戒心の解けない秘密子ちゃんに苦戦している小吉の様子がイヤに滑稽で、クスリと笑みがこぼれてしまい、ハッとする。
また見てしまっていた事に気がついて、そんな自分に自己嫌悪。ただ落ち着くために深い溜息を吐けば、隣にいた最原くんが「名字さん、大丈夫…?」声を掛けてくれた。
「あ、うん……ごめん、」
あれから最原くんはよっぽどの事がない限り、私と一緒に行動してくれるようになった。まだ、あの告白に返事をしたわけでもないのでかなり気恥しいのだけど、彼はそれすらも自分を知ってもらえるチャンスだと受け取ってる様だった。
初めてあった時、弱々しい雰囲気で背を丸め、
「……全然大丈夫そうな顔してないよ。やっぱり、直球で仲直りしたいって言ったら良いんじゃないかな?」
「そ、そんな、子供みたいな……」
「まだ高校生だし子供だよ、僕達。それに、変になにか考えるだけ無駄な気がするな。王馬くんはそういうの、全部わかっちゃいそうだから」
最原くんのそう言ってくれたけれど、今の私にはとてつもなく難題だ。
これが小学生ぐらいならきっとすぐに謝って、また仲良くしてほしい、と言えただろう。
けど、もう高校生で、大人ではないとはいえ子供かと言われると微妙な歳だ。
私が色々考えて変な顔をしていると最原くんは少し笑って私の眉間をつついた。
「シワ寄ってるよ」
「……やめてよ」
身長差があるので睨み上げると最原くんはまた笑った。仲良くなるにつれて、彼が優しいだけじゃなくて、案外男らしくてそして気遣い屋だがちょっと意地悪な1面を見ることが増えて、なんだか心がざわざわする。不思議と不愉快ではないから、余計に。
なんだか視線を感じてそちらの方を見てみればばっちりと小吉と目が合い、お互いが驚いて目を逸らす。恐らく全く同じタイミングでしてしまったであろう行為になんだか寂しくなる。
けれどお互い特に声を掛け合うことも無く、その場を去ることした。今はなんて言えばいいのかわからない。正解は何。わからない。
最原くんの腕を掴んで、少し遠回りになるけど別の廊下から移動教室をする事にした。とにかく小吉の前から消えたかった。
その時小吉は驚いていますと大袈裟な程に顔に出していてなんだか置いていかれた子供みたいな、寂しそうな顔をしていた。……せっかく秘密子ちゃんといるのに、私のことなんて気にしなければいいのに。そんなんだからいつまで経っても変な女にしか引っかからないんだよ。なんて下らないことを思っていて、つい無言になってしまう。
「え、名字さん?」
「…………。」
いきなり腕を掴まれて驚いた最原くんを何も言わずに連れて歩く。
最原くんはわたわたと慌ててはいるものの腕を振り払おうとはせず、されるがまま私に引き摺られていた。
丁度角を曲がった所で最原くんに話しかけた。
「急に引っ張ってごめんね」
そう言って組んでいた腕を話せば少し残念そうな顔で最原くんは言った。
「あ、いや、いいよ、別に。その……ちょっと嬉しかったし。でも、他の人にはして欲しくない、かな」
嬉しい、けどほかの人にはやって欲しくない。それはわかりやすい好意の言葉だった。やはり何度言われても慣れないなあ、と思いながら苦笑いで言葉を返す。
「……やっぱ最原くん変わったね。」
「名字さんのせいかもね」
「え、私のせい?」
あははと軽い笑い声が長い廊下に軽く響いた。お互い視線が交じって、笑い合う。なんてことはない、日常の一コマ。最原くんには何を言っても大丈夫な気がする。この数週間の間に、私は最原くんをすっかり信頼してしまったんだろう。……最原くんも、私のこと一番に信頼してくれたらイイな、なんて考えて………。
一番。私の一番ってずっと小吉だったんだよね。それで、小吉の一番も私だった。ハズ。…また思考を巡らす。
いつから一番じゃなくなったんだろう。
あの喧嘩で、いや、もっと前から……小吉がお遊びのように恋人を作った時から、小吉から私への明確な好意と言おうか、心が見えなくなったから、私は小吉を遠ざけてしまったのかな、