僕らの愛は恋ではなかった
名前
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そうしてまた同じような理由で彼女と別れたことを告げれは名前は「本当にクズだね」と言って笑う。
名前がこうして笑うのはオレと付き合う女が皆どこの馬の骨かも分からない、勿論名前の友達でもない、物語でいえばただのモブだからだ。
他人の不幸は蜜の味と言うけど、まさにその通りだと思った。
モブの女の子達を不幸にするかわりに受けられる蜜が名前の本音。
とはいえ、何度も何度も同じことを繰り返していれば嫌でも慣れてくるもので、名前はオレに彼女が出来るのはもうどうでもいいと言った様子だった。
「皆小吉の顔に騙されちゃって可哀想」
「ちょっとちょっと!失恋して傷心中の人間に言うセリフじゃないよね!?」
「え?傷ついてるのは女の子の方でしょ?」
「オレだって傷ついてるよ!また面倒臭い女引っ掛けちゃったなって」
「…………本当に屑野郎」
どうして対して好きでもない女と付き合えるのか分からないと目線が訴えかけてきたが、オレは特に答えることはしなかった。本音の言葉だけが欲しかった割に、このころはオレも本音がろくすっぽ言えなかったからだ。
罪悪感、なのかな。女の子たちに情でも湧いたわけではないのに。
けれどもう、オレに、名前限定で変なところが天邪鬼な俺には戻り方もなんて言えばいいのかも分からない。子供の時はあんなに楽だったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。
幼馴染と言いながらお互いが牽制しあってる。無意識的に牽制する名前と違って、意識的に牽制しているから余計に感じることだった。
ただただ広がり続けた距離にオレはなす術もなく、なし崩しに女をつくって報告して、また面倒臭くなったら捨てる。それの繰り返しが『普通』になりつつあった。
もうここまで来たら名前自身はオレのことを特別に思っていないのではないんじゃないか、とまで思うようになった。
たまたま兄弟のように育った幼馴染な訳で、別に血が繋がっているわけでも、なにか特別なものを共有して生きてきたわけでもない。ましてやオレ達がオレ達の関係に良くある陳腐な小説や漫画のようにありきたりな恋愛感情なんてものもない。
……そう考えるとオレ達の関係は近くて遠くて、それでいてとても壊れやすい関係だ。第三者が入るだけで簡単に亀裂の入るシャボン玉のようにフワフワと軽く、脆い関係だった。
まずオレ達の関係に第三者を入れてしまったのは意図せずとも俺の方だった。
あの時、あのタイミングでオレが対して好きじゃない女と付き合ったのが一番の大間違いだったんだ。
もし、あの時のオレが、本当にとてつもなく好きな女と付き合っていれば、動揺しながらも応援してくれただろう。
万が一こっ酷く振られたり振ったりしても名前は慰めながらしっかりと本音で話してくれて、前のような幼馴染のポジションにいてくれたように、今となっては思えるのだ。
オレ達の関係を壊したのは、オレ自身だった。
好きじゃない女と付き合って、時々フラフラと名前の元へ行ってはいつものようにけしかけようとしても、名前は名前なりに気を使って我慢してオレと巫山戯ることをする事もしなくなった。
決まって「彼女のところ行きなよ」が口癖になっていた。
「……もう帰るの?もう少し遊ぼうよ」と楽しそうに夕日に照らされて言う名前をもう随分と見ていない。
そんな名前をこの前ついに泣かせるまで追い詰めてしまった。
オレの言葉は嘘と真実が混じっている。
基本的には嘘ばかりだか、どこかに1つ真実が交じると、人間はそれが真実だと思ってしまう。
嘘をつくためには真実が必要だ。真実がなければ嘘なんてつけない。
オレは本音が知りたかった。幼馴染として、ほとんど双子のように育った名前が気になる男が出来たことは正直複雑な気持ちだった。
誰かの一番になると言う事は、その人の一番も変わってくるから。そう、だから名前はあれだけオレに「彼女を大切にしなよ」と言ったんだ。
誰だって好きな人や恋人は一番大切にしたいし、手に入れて傍に居てほしくなるだろう。それを全部分かっていたあいつの言葉をオレは無視した。なぜならオレの一番は今も昔も名前と悪ふざけをすることだったから。
そんな名前が女の子としての幸せを初めて掴もうとしている。
思えばオレが常に一緒にいたせいでそう言った浮ついた噂も、気になる男もいなかったし、オレは大人になってずっとお互いが独身でいたら30歳手前で「しょうがないから」なんていいながら結婚できる様な仲なんだろうななんて考えていた。
マ、けど最近は名前は気になる男がいて、それを聞いてみれば不適切な関係がバレたかの様に口を閉ざしてしまった。
『正直自分でも良くわかっていない』と言った視線では、その男のことをアリかナシか考える余地があるならほぼ好意的に思っていることは明白だった。
…けど、オレと一緒にいたいと思ってくれているのもひしひしと感じることが出来た。
けれどそれを口にはしてくれなかった。本音を教えてくれなかった。鼻がキンと傷んで目の奥が熱くなった。酷く悲しくて、オレからアイツを遠ざけたと言うのに、アイツを責める言葉をナイフにして名前の心も俺自身の心もずたずたに切り裂いていく。
「なんでもかんでも知ってると思ったら大間違いだろって言ってんの。何様のつもりだよお前」
本当、何様のつもりでオレはアイツと一緒にいたんだろう。
「そのくせ大事な事は何一つ言わずに溜め込んで結局俺に責任転換するのも辞めろよ。いい加減うっざいし」
違う。今全てのことを責任転換して責めているのはオレの方だ。
「今も昔も俺の面倒見てる振りして俺に依存してただけでしょ。ってことはようやく俺は自由になれんだね。あー、良かった。」
それは全て、お互い様だった。
オレは全てを言えて何でも受け入れてくれる名前に依存して、名前は言わなくても分かるオレに依存していた。
言葉は時に、真実よりも人を傷つける。それを名前は分かっていて、きっと今のオレと同じ苛付きを抱えながら今まで側に居てくれたのだ。
オレが良く言う『優しい嘘』を無理やり『本音』へと昇格させられるように振舞っていたんだ。その事に何十年もかかって気がついてしまった。
オレ達の愛は恋じゃない。昔はもっと綺麗で如何にも家族愛だったはずなのに気がつけばこの愛はよく分からない独占欲が混じった気味の悪いものになっていた。
オレは昔の自分たちの家族愛が欲しかったんだと、この喧嘩でようやく本当の意味で気がつけた。
とはいっても、喧嘩してからと言うもの、オレはいつものように名前に絡みに行くことも無く。
どことなくオレを視界に入れないように生活する名前は、最原ちゃんと一緒にいることが増えた。
名前がこうして笑うのはオレと付き合う女が皆どこの馬の骨かも分からない、勿論名前の友達でもない、物語でいえばただのモブだからだ。
他人の不幸は蜜の味と言うけど、まさにその通りだと思った。
モブの女の子達を不幸にするかわりに受けられる蜜が名前の本音。
とはいえ、何度も何度も同じことを繰り返していれば嫌でも慣れてくるもので、名前はオレに彼女が出来るのはもうどうでもいいと言った様子だった。
「皆小吉の顔に騙されちゃって可哀想」
「ちょっとちょっと!失恋して傷心中の人間に言うセリフじゃないよね!?」
「え?傷ついてるのは女の子の方でしょ?」
「オレだって傷ついてるよ!また面倒臭い女引っ掛けちゃったなって」
「…………本当に屑野郎」
どうして対して好きでもない女と付き合えるのか分からないと目線が訴えかけてきたが、オレは特に答えることはしなかった。本音の言葉だけが欲しかった割に、このころはオレも本音がろくすっぽ言えなかったからだ。
罪悪感、なのかな。女の子たちに情でも湧いたわけではないのに。
けれどもう、オレに、名前限定で変なところが天邪鬼な俺には戻り方もなんて言えばいいのかも分からない。子供の時はあんなに楽だったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。
幼馴染と言いながらお互いが牽制しあってる。無意識的に牽制する名前と違って、意識的に牽制しているから余計に感じることだった。
ただただ広がり続けた距離にオレはなす術もなく、なし崩しに女をつくって報告して、また面倒臭くなったら捨てる。それの繰り返しが『普通』になりつつあった。
もうここまで来たら名前自身はオレのことを特別に思っていないのではないんじゃないか、とまで思うようになった。
たまたま兄弟のように育った幼馴染な訳で、別に血が繋がっているわけでも、なにか特別なものを共有して生きてきたわけでもない。ましてやオレ達がオレ達の関係に良くある陳腐な小説や漫画のようにありきたりな恋愛感情なんてものもない。
……そう考えるとオレ達の関係は近くて遠くて、それでいてとても壊れやすい関係だ。第三者が入るだけで簡単に亀裂の入るシャボン玉のようにフワフワと軽く、脆い関係だった。
まずオレ達の関係に第三者を入れてしまったのは意図せずとも俺の方だった。
あの時、あのタイミングでオレが対して好きじゃない女と付き合ったのが一番の大間違いだったんだ。
もし、あの時のオレが、本当にとてつもなく好きな女と付き合っていれば、動揺しながらも応援してくれただろう。
万が一こっ酷く振られたり振ったりしても名前は慰めながらしっかりと本音で話してくれて、前のような幼馴染のポジションにいてくれたように、今となっては思えるのだ。
オレ達の関係を壊したのは、オレ自身だった。
好きじゃない女と付き合って、時々フラフラと名前の元へ行ってはいつものようにけしかけようとしても、名前は名前なりに気を使って我慢してオレと巫山戯ることをする事もしなくなった。
決まって「彼女のところ行きなよ」が口癖になっていた。
「……もう帰るの?もう少し遊ぼうよ」と楽しそうに夕日に照らされて言う名前をもう随分と見ていない。
そんな名前をこの前ついに泣かせるまで追い詰めてしまった。
オレの言葉は嘘と真実が混じっている。
基本的には嘘ばかりだか、どこかに1つ真実が交じると、人間はそれが真実だと思ってしまう。
嘘をつくためには真実が必要だ。真実がなければ嘘なんてつけない。
オレは本音が知りたかった。幼馴染として、ほとんど双子のように育った名前が気になる男が出来たことは正直複雑な気持ちだった。
誰かの一番になると言う事は、その人の一番も変わってくるから。そう、だから名前はあれだけオレに「彼女を大切にしなよ」と言ったんだ。
誰だって好きな人や恋人は一番大切にしたいし、手に入れて傍に居てほしくなるだろう。それを全部分かっていたあいつの言葉をオレは無視した。なぜならオレの一番は今も昔も名前と悪ふざけをすることだったから。
そんな名前が女の子としての幸せを初めて掴もうとしている。
思えばオレが常に一緒にいたせいでそう言った浮ついた噂も、気になる男もいなかったし、オレは大人になってずっとお互いが独身でいたら30歳手前で「しょうがないから」なんていいながら結婚できる様な仲なんだろうななんて考えていた。
マ、けど最近は名前は気になる男がいて、それを聞いてみれば不適切な関係がバレたかの様に口を閉ざしてしまった。
『正直自分でも良くわかっていない』と言った視線では、その男のことをアリかナシか考える余地があるならほぼ好意的に思っていることは明白だった。
…けど、オレと一緒にいたいと思ってくれているのもひしひしと感じることが出来た。
けれどそれを口にはしてくれなかった。本音を教えてくれなかった。鼻がキンと傷んで目の奥が熱くなった。酷く悲しくて、オレからアイツを遠ざけたと言うのに、アイツを責める言葉をナイフにして名前の心も俺自身の心もずたずたに切り裂いていく。
「なんでもかんでも知ってると思ったら大間違いだろって言ってんの。何様のつもりだよお前」
本当、何様のつもりでオレはアイツと一緒にいたんだろう。
「そのくせ大事な事は何一つ言わずに溜め込んで結局俺に責任転換するのも辞めろよ。いい加減うっざいし」
違う。今全てのことを責任転換して責めているのはオレの方だ。
「今も昔も俺の面倒見てる振りして俺に依存してただけでしょ。ってことはようやく俺は自由になれんだね。あー、良かった。」
それは全て、お互い様だった。
オレは全てを言えて何でも受け入れてくれる名前に依存して、名前は言わなくても分かるオレに依存していた。
言葉は時に、真実よりも人を傷つける。それを名前は分かっていて、きっと今のオレと同じ苛付きを抱えながら今まで側に居てくれたのだ。
オレが良く言う『優しい嘘』を無理やり『本音』へと昇格させられるように振舞っていたんだ。その事に何十年もかかって気がついてしまった。
オレ達の愛は恋じゃない。昔はもっと綺麗で如何にも家族愛だったはずなのに気がつけばこの愛はよく分からない独占欲が混じった気味の悪いものになっていた。
オレは昔の自分たちの家族愛が欲しかったんだと、この喧嘩でようやく本当の意味で気がつけた。
とはいっても、喧嘩してからと言うもの、オレはいつものように名前に絡みに行くことも無く。
どことなくオレを視界に入れないように生活する名前は、最原ちゃんと一緒にいることが増えた。