君に繋がる赤い糸
名前
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どうも最近名前の目はおかしい。
と言うのもどうも<赤い糸>が見えるようになってしまったのである。
ここだけ聞くとまるで頭のおかしい電波少女だが、至って真剣で、本当のことなのだ。
自身の左手の小指からふよふよと繋がれた赤い糸は誰と繋がっているのかは分からないが確かに何処かへいる相手へと伸びている。
もちろん、超高校級の称号を持つスーパー高校生とは言え、只の女子高生な部分もある。
赤い糸なんて運命的でロマンスを運んできそうなものが、気にならないはずがない。
しかし、この赤い糸は名前にしか見えず、最近はこの赤い糸の行方をじっと見つめたり引っ張ってみたり何だりしていると、奇行を目撃した友人である春川に「アホヅラで何やってんの」と言われた。
ようやく他人の前では気になるそぶりを見せると大変気味が悪いと気付いた名前は、誰も見てないであろうタイミングを見計らい、手刀でこの赤い糸を切ってみた。
するとぷつん、と切れた糸に拍子抜けした。
「なんだ。赤い糸って大したことないのね」
そう、思っていた。
しかし次の瞬間、切れたはずの糸は何事も無かったかのように元の1本に戻っていて、目を疑った。
急に空中に手刀を繰り出した挙げ句目をまんまるにして驚く名前をたまたま見た春川が怪訝な顔をしながら
「アンタ最近どうしたの?百田みたいにアホっぽいよ」
とまた注意される。
「そ、れは私にも百田くんにも失礼だよ魔姫ちゃん……!」
うっかり春川に不審な行動とともに素っ頓狂な顔をしてるのを見られてしまったので、へんな誤魔化し方になってしまった。
未だふよふよと浮くこの赤い糸は誰も見えていない。
春川にいざ伝えても「頭も可笑しくなったの?」と言われる気がして名前は何も言う気にもなれなかった。
***
ついに、ついに見つけてしまった。名前は自身の小指から伸びる運命の赤い糸の先、運命の相手である人と出会ってしまった。
まさかこの学園にいたとは、と驚いたのもあったが、まさか苗木だったとは。
苗木誠。隣のクラスで、超高校級の幸運と呼ばれるその男子生徒はその地味な見た目によらず、いや、地味だからなのか、超高校級のアイドルである舞園さやかに想いを寄せられているらしい。
「(いきなり難易度いじわるなんだけど……)」
名前はまあ可愛いが、可愛さの化身である舞園とタメを張るかと言われればそうではない。
舞園が上の上なら名前は中の中、よく言って中の上だと言える。
勝てない試合とはまさにこのこと。
しかし、そう思っても別に名前は苗木のことが本当にこの赤い糸が定めた運命の相手であることに気になりこそすれば、まだ好きなわけでもなかったので、特別気にする事は無かった。
***
「名前ちゃん、呼ばれてるよー」
「はいはーい今行きまーす」
それからしばらくして、教室でレポートを纏めていると名前は赤松に声を掛けられた。どうも他クラスの誰かからの呼び出しのようだった。
特に扉に目をやることもなくテキトウな返事をして、レポートがキリの良い所で終わらせた。
パッと扉側を見ると、呼び出したのは苗木誠だったのだ。
目が合って、苦笑いされる。
一体なんの呼び出しなのかと考えてみる何一つとして思い当たる事がない。
…いや、まさか、赤い糸効果!?と思い名前は自分の小指を見てみるとやはり苗木の小指に繋がっている。まさか、まさかなのか?
気持ちが焦るばかりしばらく足が動かなかったが、変に待たせるのも相手に悪いと思って苗木の元へ向かった。
「え、と…どうかした?」
「あの、ちょっと来てもらってもいいかな?」
「いいけど、」
いよいよ赤い糸の伝説が身を持って体感出来るのかもしれない……名前の知的好奇心が疼き出す。この時名前は苗木に対して隣のクラスの男の子で、顔見知り、ぐらいにしか思っていなかったので余計に心臓が早鐘を叩く。
そのまま道中どちらとも喋ることなく、目的地である空き教室についた。
ガラリ、と立付けが若干悪い扉を開いて教室へ入る。若干暗いが、まだ昼過ぎだし電気をつけなくても良い様な明るさだった。
「あ、あのさ、名字さん」
「なにかな?」
「その、よければ、なんだけど……」
空き教室の鍵を締めて少し赤い顔で視線を泳がせる苗木に、なんだかドキドキしてきた。
苗木が名前に好意を抱いているの一目瞭然で、流石の名前も意識せざるを得なかった。
ドキドキとなる心臓の音をこれでもかと聞いた様な気がする。
思い切った様子で苗木は名前を見つめた。
「ぷ、プラネタリウム!一緒に行ってもらえませんか!」
ずいっと差し出された手にはプラネタリウムのチケットが握られていた。
なんだか見覚えのあるチケットで、名前は目を凝らして見た。
驚きに目が丸くなる。まさか、それは……!
苗木の手を思いっきり掴みチケットをガン見する。
「すごい!これ完全予約制のプラネタリウムのチケット!?うわあしかもヒーリング回のじゃん!!!すごいよ!!」
ちょうど名前が1番行きたい場所のチケットだったのだ。
ヒーリングプラネタリウム。日々の疲れを、美しく輝く星々とリラックス効果のあるアロマ、そして優雅な旋律のクラシックの名曲で癒す、史上最高のパフォーマンス型プラネタリウム。
星だけでも癒しなのに、そこに加わるアロマセラピー、そしてクラシック!なんて素晴らしい出会いなのだろう!と1人甘美に酔いしれた名前のテンションはブチ上がった。
振り切れんばかりのテンションに少し困惑しつつ苗木は名前のキラキラした瞳の輝きに目を奪われていた。
「あ、ごめんね、ついテンションがあがっちゃった……。」
視線に気付いたからか、少し気恥ずかしそうに笑う名前に、苗木誠はこのチケットを手に入れたツテを話してくれた。
「だ、大丈夫……たまたま雑誌の懸賞に当たってさ……名字さんは超高校級の天体観測士だから、こういうの好き、かなって……」
食いつきのいい名前に安心したように話す苗木は手を握り見つめあっていた事に気付き恥ずかしそうに頬をかいた。
「すっごい好き!超好き!すごいよ苗木くん!流石幸運!ほんとに一緒に行ってもいいの!?」
「もちろんだよ!その、名字さんと行きたくて懸賞応募したようなものだし……まさか当たるとは思わなかったけど」
「!」
苗木が真っ直ぐに名前を見つめてそう伝えるとプラネタリウムに行ける喜びが途端に異性とのデートにランクアップされた。
急に手を思いっきり握っていたことに気恥ずかしさが出てきて、ぱっと手を離した。
「その、誘ってくれてありがとう……」
「僕が好きで誘ってるから、気にしないで。」
「す、すき……!?」
さらりと言う苗木の言葉に過剰反応してしまい、苗木も慌てて話し始める。
「いや好きって言うのは違……くはないけど、その、あー……」
恥ずかしそうに顔を覆う苗木が小声で
「もっとかっこよく言うつもりだったんだけどなぁ、」と言っているのが聞こえて、さらに名前はドキドキした。
「その、名字さんのことが好きなんだ。だから……お友達からよろしくお願いします!」
「う、うん……」
お友達から……なんて言っていたがこの一件で名前は苗木のことが異性として気になっていた。
確かにプラネタリウムに釣られた感は否めないが、苗木が名前の為を思って考え、行動してくれたのが何だかんだ嬉しかったのだ。
もしかしたら、このふたりが付き合い始めるのも遅くはないかもしれない。