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今日はグラビア撮影があるから、学校には遅刻して行くことになるなあ。
一応クラスメイトの誰かに連絡を入れようかと迷ったけど、別に3限ぐらいからは登校できるしなぁ、と連絡することはなくLANE画面を閉じた。ま、ちょっと面倒臭かったってのはあるけど。
今日は日差しが強すぎて、液晶画面が見にくくて嫌になる。春先なのにやたら気温高いし。
変に日焼けするのも嫌だし肌にも悪いから日陰でじっと待っていればマネージャーが迎えに来てくれたので、車に乗り込んだ。
「今日もよろしくおねがいしまーす」
「はいよー、シートベルトしめました?発車しまーす」
シートベルトを締めたのをマネージャーがちらりと確認すると車が動き出した。
マネージャー、車の運転上手いし、なんかかっこいいんだよなあなんて思いながら今日の仕事に思いを馳せた。
仕事って楽しいけど、するまでが面倒くさいよね。
車の中で今日の仕事のコンセプトについて考えていたら、「後15分くらいでつくから、」とマネージャーが言う。
こう言ってくるってことはもう車の中で寝ないでって意味だ。私、寝ると起きるのに時間がかかるから(事実何回か寝てマネージャーの手を煩わせたし)
まあ今は眠くないし、コンセプトも思い出したから大丈夫だと思うけど。
もうすぐ春だから、って確か今回は新居に引っ越した同棲カップルがコンセプトだったはずだから、ベッド撮影が多そうだな、と一人考えた。
ほら、よくある
「疲れちゃったから一緒に寝よ?」
のショットとか
「……好きにしていいよ」みたいなショットとか。
とにかくはやく終わらせて学校行っちゃおうっと。
マネージャーが百面相していたらしい私を見て笑った。
「学校が楽しいようで何よりだわ」
「まー今までの学校に比べればね」
「学生なんて今のうちだけだしね。楽しめるだけ楽しみなさい」
「はーい。」
マネージャーはいつもすこし年寄りじみたことを言う。まだ30代なのにいいのそんなんで、と思うけど言わない。言うと怒るから。
ささっと現場の人達に挨拶をして、控え室で化粧や衣装替え(今回は同棲カップルがテーマだからか、いつもより際どいものがなかった)をして撮影場に入ると、カメラマンさんに早速ベッドに寝転ぶように指示される。
「おはよう名前ちゃん、今日もよろしくねー」
「はい!よろしくお願いします!」
ピンクの花柄のベッドシーツに早速転がってポーズを取ってみたり、表情を変えてみたりするとカシャッと言うカメラの音とフラッシュが焚かれる。
「あー、いいねいいね!次ちょっと節目がちにしてもらえるー?」
「はーい」
ニコニコ笑いながらさらにフラッシュを浴びる。
グラビアアイドルってこうやってチヤホヤされるから私は案外この仕事が嫌いではない。人に褒められるのってやっぱり嬉しいし気持ちいいじゃない。
一度に人に見られる仕事をすると辞められないって業界の人が言うのも納得できる。
………いや、今はそんなことどうでもいいね。はやく終わらせなければ。
後衣装直しも2回ぐらいあるし、化粧崩れもあまりしないように気をつけなきゃね。
……撮影は滞りなく進んで、控え室で制服に着替えているとスマフォ画面が光り出した。
LANEの表示画面にはコメントと共に送信主の名前が。
「ああ、入間さんか」
入間美兎。同じクラスで私と同じスリーサイズを持つ彼女は超高校級の発明家で、気が強いんだか弱いんだかよく分からない女の子だ。
下品な下ネタをバシバシ言ってしまうのでクラスメイトから引かれることも度々あるけれど、最近は丸くなってきたと言うか、気のせいかもしれないが私には優しいというか、案外意思の疎通も出来るし、そもそも発明家だけあって頭がいい。
ああいう何かを生み出す職業を極めた人は若干頭がおかしいというのは希望ヶ峰では定説になりつつあるし、そもそも希望ヶ峰にまともな人間はいない。みんな一癖も二癖もある人たちばかりであるけれど、いい友人として付き合っている。
そもそも私もグラビアアイドルをしているから、前の学校じゃ女子には疎まれるわ悪口言われるわ、男子には性欲の対象としてしか見られていなかった。まあエロい目で見られるのは慣れてるし、見ていてくれなきゃ仕事にならないからいいとしても、悪口や無視とかはねー。結構厳しいものがあったよね。
けど、希望ヶ峰のみんなは優しいし、私を私として、ただちょっとスタイルのすごい女子高生みたいな感じで扱うし、まあ何が言いたいかと言うと過ごしやすいこの学校が好きだって事だ。グラビアアイドルとしては悔しいけど、スタイルの良い女の子は沢山いるし、妬まれることもなくお友達ができて呆気に取られたぐらいだ。
希望ヶ峰の人と来たら、皆『普通』から外れたはぐれ者ばかりの学生ばかりだし、だからこそ上手くやっていけているんだろうな。
特に入間さんはあんな性格だから私の仕事に嫌悪感を抱くどころか私の写真集を寄越せとか言うし、上げたら見てくれて「俺様と同じぐらいエロエロじゃねぇか!流石ヴィーナスボディだけあるな!」と褒める始末。
そんな彼女のことを思い出して笑ってしまった。LANEに『これから学校行くよ~!』と連絡を入れて、急いでマネージャーの所へ走った。警察に捕まらない程度に車かっ飛ばして貰おう。
***
今日も学校に登校してやれば、俺様と同等のヴィーナスボディを持つグラビア女が何故か来ていなかった。
なんで大天才の俺様より後に登校してやがんだあのグラビア女!そう思った俺様はちょうど近くにいた処女松に話しかけてやった。
朝からこんな美女に話しかけてもらえるなんていい思いできて良かったな処女松!
「おい処女松!なんでグラビア女はまだ学校に来てねぇーんだよ!」
「ええ!?知らないよ!大体、名字さんと一番仲いいの入間さんだよね?何も聞いてないの?」
「聞いてねーからオメェに聞いてんだよ!全く使えねぇな!」
「もー!入間さんには言われたくない!」
「ひぐぅ……お、怒るなよぉ……!」
何故か怒られちまった俺様は情緒不安定な処女松から離れると自分のスマフォ(もちろん色々弄って改造してある。天才的な俺様に相応しいようにな!)を開き、グラビア女に連絡する。
この俺様から連絡させるなんてあの女、なかなかやるじゃねぇか。
暫くの間既読がつかず、俺様らしくもなく焦ってきた。
あ、あいつまさか俺様のこと未読無視してるんじゃないよな……?いや、この美人すぎる大天才である入間美兎様を無視するなんてこと、出来るはずない……!
馬鹿げた事が頭の中でグルグルと巡っていたが、答えは出なかった。
2限が始まって少しして、スマフォが振動した。このバイブ機能でオナったらまあ気持ちいいんだろうが、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
もしかしたら、と見てみればあのグラビア女からだった。
『これから学校行くよ~』と抜けたアホみたいな返事だった。けれど少しだけ返信が帰ってきたことに安心する。
なんだ、やっぱり俺様を無視してた訳じゃねぇんだな!
2限はなんとなく上機嫌に寝ることが出来て万々歳だぜ!
***
無事にマネージャーに警察に捕まらないギリギリのラインを攻めてもらいながら希望ヶ峰学園の前まで送迎してもらい、
3限が始まるちょっと前にクラスに入ることができた。
机に突っ伏して寝ている入間さんの肩を叩いて「おはよう」と声をかける。
眠そうな入間さんは私を見るとカッと目を見開いて
「テメェ俺様に連絡もなしに遅刻してくるとはいい度胸じゃねぇか!」
と怒り始めた。
「え、ええ……」
「連絡しても全然返事来ねぇし!」
「それは……ごめんね」
プリプリ怒る入間さんにだけは前もって連絡を入れておくべきだったか、と反省した。薄々感じてはいたけどやっぱどこか寂しがり屋なのかもしれない。
「ごめんね、入間さん」
「ッフン!分かりゃいいんだよ分かりゃ……!お詫びに今日のグラビア誌出たらとっとと寄越しやがれ!」
「えっ?また見てくれるの?」
「当然だろーが!」
エロエロが大好きな入間さんにグラビアを献上する事で許しを得たけど……なんだかそれを抜いても少し嬉しそう。そんなにグラビアが好きなのか。それとも私と友達だから読んでくれてるのか。……うーん、入間さんなら両方なのかなぁ。
そう思うとなんだか私も嬉しくなってきた。
「入間さ……いや、美兎ちゃん」
「ひぇ!?」
「いつも仲良くしてくれてありがとね」
「なっ、べ、別に……そんなんじゃ……て言うか名前……」
「ダメかな。」
「ひぅ……だ、ダメじゃない……、」
「これからもよろしくね、美兎ちゃん」
名前を改めて呼べば美兎ちゃんは恥ずかしいのか弱気モードに入ってしまった。
しどろもどろになる美兎ちゃんが何か言おうとしたタイミングで3限開始のチャイムが鳴った。
席つかなきゃ、とそう言って離れようとする私の制服を後ろから掴む美兎ちゃんに苦笑いを零す。
「どーしたの?」
「お、おい……名前、」
「!なに?」
「昼飯、は、一緒に食うんだからな……」
「うん、もちろん」
「放課後も、開けておけよ……」
「うん」
恥ずかしそうに名前を呼ばれて、ちらりと後ろを見れば顔が赤い美兎ちゃん。
なんだか前よりも仲良くなった気がする。ふふ、お昼も放課後も待ちきれないね。
ようやく離された制服の裾は美兎ちゃんのせいでちょっとよれていた。