唇にひだまり
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季節は冬、乾燥のピーク。
もともと乾燥に弱い私の唇は、もう限界だった。
「さくら、またリップ塗ってないだろ」
帰り道。
並んで歩きながら、幸村が私の顔を覗き込んで言った。
『だって……リップってベタベタして気持ち悪いんだもん』
私は顔を逸らして、さっきコンビニで買った肉まんを頬張る。
幸村はそんな私に呆れたようにため息をついた。
「その唇じゃ、いつまで経ってもキスできないんだけど」
『え?幸村、私とキスしたいの?』
予想外の言葉に、思わず幸村の顔を見ると、少しだけ赤い顔の彼と目が合った。
「そりゃあね……俺たち、付き合ってるんだし」
はにかんでそっぽを向くその仕草が妙に可愛くて、そんな姿を見れたことが嬉しくて、私はもうひと口肉まんをかじろうと口を開けた。
その時だった。
『痛っ……』
乾燥で荒れてた私の唇が、ピリッと切れてしまった。
思わず顔をしかめた私を見て、幸村がまたひとつため息をつく。
「さくら、ほら」
そう言って幸村がポケットから取り出したのは、あのひだまりの香りのリップクリームだった。
『う、私ほんとにリップ苦手で……』
何とか逃れようと必死に言い訳を並べてる間に、幸村は自分の唇にリップを塗り始めた。
そして……
「だーめ」
私の顎をそっと掴んで——
そのまま、私の唇に重ねてきた。
初めてのキス。
ひだまりの優しい香りと、柔らかくて温かい感覚が、唇に落ちてきた。
『……っ!』
突然のことにびっくりして、私は思わず息を呑む。
幸村は唇を離すと、意地悪な笑みを浮かべて私を見た。
「ほら、これで塗れただろ?」
……ずるい。
こんなのずるい。
ずるすぎる。
『もっと、きれいな唇でしたかったのに……』
俯いてぽつりとそう零すと、大きくて優しい手が私の髪を撫でた。
「だったら、普段からちゃんとケアしてよ……俺のために」
顔を上げると、優しく微笑む幸村がいた。
そんな顔でそんなこと言われたら、もう頷くしかない。
私は幸村からリップクリームを受け取ると、そっとポケットにしまった。
相変わらずリップは苦手だけど。
塗るたびにあのキスを思い出してドキドキするけど。
今度こそ、きれいな唇でしたいから……
私は唇に薄くリップを乗せる。
ふわりと漂うひだまりの香りに、心も笑顔になれる気がした。
唇にひだまり end.
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