ヤキモチの味
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放課後。
部活の片付けを終えた私は、カバンの中から銀色の包みを取り出した。
部室の隅で、音が鳴らないように、そーっと包み紙を破く。
茶色くてつやつやのチョコバーが顔を出した。
ひと口かじると、その濃厚な甘さが心を満たしてくれる。
部活の疲れなんて、全部吹っ飛んじゃう瞬間だ。
「さくら」
幸せの味を噛みしめていると、背後から私を現実に引き戻す声が聞こえてきた。
『れ、蓮司……』
振り返ると、予想通りの呆れ顔で立っている幼なじみの姿があった。
「さくら、ダイエットするんじゃなかったのか?」
『う……ちょっとだけ、ちょっとだけだから……』
「そう言って、昨日も一昨日も食べていたな」
『それは……』
蓮司は小さくため息をつくと、私の手からチョコバーを奪った。
よっぽど未練たらしい目をしていたのか、蓮司はほんの少し悲しそうに眉を下げて口を開いた。
「これを食べたら、また後悔するだろう……そんなさくらは見たくない」
そんな風に言われたら、何も言えない。
私たちの間に、軽い沈黙が流れた。
「お、チョコじゃん!さくらの?」
重たい空気を切り裂くように、明るい声が飛んできた。
ブン太だ。
『私のなんだけど、えと、ダイエット中で……』
「だから俺が没収したところだ」
ちらちらと蓮司を見上げながらの私の言葉を引き継いで、蓮司がそう言い切った。
「ふーん」
ブン太は興味なさそうに返事をすると、蓮司が持ってるチョコバーに視線を戻す。
「さくらが食べないなら、俺が食べていい?」
言うが早いか、ブン太はチョコバーに手を伸ばす。
が、蓮司が腕を高く掲げて躱すから、その手は虚しく空を切った。
「冗談でも、人のものに手を出すのはよくないな」
「……ちぇー、わかったよぃ」
普段よりどこか鋭さを増した蓮司の声に、ブン太は肩をすくめて帰っていった。
『……返してよ』
みんな帰った後の部室に、私の声が妙に反響する。
「ダイエットはやめるのか?」
『やめないよ、痩せたいもん』
「そうか」
そう言うと、蓮司は持っていたチョコバーを全部食べてしまった。
『あ!ちょっと……』
「ブン太と間接キスするところなんて、見ていられなかった」
蓮司の言葉に、一瞬何も考えられなくなった。
『え……?それって、どういう意味……?』
声が震える。
顔が熱い。
きっと、赤くなってる。
蓮司は答えない。
代わりにちらりとこっちを見て、すぐに顔を逸らした。
いつも冷静な蓮司の耳が、少し赤い。
「……わからないなら、いい」
そう言って、蓮司はカバンを肩に掛ける。
「ほら、帰るぞ」
『あ、待ってよ!』
足早に部室を出る蓮司を、慌てて追いかける。
さっきの言葉が、胸の中をぐるぐると駆け回る。
たどり着いた結論にドキドキして、苦しくて、でも嬉しくて。
追いついて隣に並ぶと、不意に口元が緩む。
——明日からは、チョコバーは封印しよう。
誰とも間接キスにならないように……
ヤキモチの味 end.
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