「おじゃましまーす」

ブレイクの部屋に遊びに来た。部屋の温度計を見るといつもと変わらず気温は低め。ダウンは着てきたものの、まだまだ寒い。

「なんか飲むかー？」

「えっとね、温かいのない？」

「お客様ぁ、非っ常に残念ですが当店ではそのような品はお取り扱いございませーん」

レストランみたい。

「じゃあ、とりあえず氷抜きで。お任せします」

「あいよっ」

八百屋みたいな返事だった。

「それにしてもよく寒くないね」

「オレからしてみれば、お前の方が暑くねぇのかって話だけどな」

「着てみる？」

「ア？オイ、バカッ、やめろっ」

真っ黒な背中にダウンを羽織らせてみる。こ、これは…っ！

「………………。」

「え、待って待って待って。ムリ、しんどい。あまりにも良すぎる。今日はもうそのままでいなよ！」

「名無しは大丈夫なのかよ」

「その姿見たら寒さなんて吹き飛んじゃった。少しも寒くない！」

「………………。ブレイク、へんし…っ」

「ちょ、ちょっと待ってダメーーー！？」

いきなり変身しようとするブレイクを全力で止めた。

「何急にナニ！？」

「いや、暑くて耐えらんねぇわコレ。よくこんなモン着てられるな」

「脱ぐなら普通に脱いでよっ」

あぁ～、写真に収めたかったなぁ。もう二度と着てもらえなそう。

「名無しの匂いがして落ち着かねぇし」

「へ？」

「あー何でもない！とっとと始めようぜっ」

慌てた様子で四角い箱とコードの付いた機械を持ち出すブレイク。

……やっちゃった！聞こえてたのに！恋人らしい雰囲気にするチャンスだったのに！

そう、今日の私には目標がある。

それは、少しでも甘い雰囲気になること！

せっかく付き合っているのに、いつまでも友達と変わらない距離感なのがどうも引っかかっていた。悪いワケではないのだけど。

でもこう、もうちょっとこう………なんかあれ！と思う次第だ。

「コードこっち繋いでくれ」

「はーい」

…ふぅ、失敗してしまったものは仕方ない。気持ちを切り替えてまたチャンスを待とう。