「ん？名無しにD-NAVIじゃないか。珍しいな。一体どう…し………」

私の姿に気づいたセイバーバックさんが言葉を失った。額に手を当ててため息をついている。一緒にいたアルカディスさんも同じように絶句。

「本当にどうした？」

「紹介するわ。アタシのペット、名無しよ」

あ、今初めて名前呼ばれた。嬉しい。

「ほら、挨拶して」

「ワン」

もっとも、こんな状況でなければだけど。

「あ、あぁ……」

「そ、そうですか。それはそれは…」

良かった。フツーに引いてくれてる。

「では、そちらの可愛らしいおイヌ様を触らせていただいても？」

「切り替え早いなっ」

「少しだけだからね」

アルカディスさんが手を伸ばしてくる。

頭でも撫でるのかな。

それくらいならいいかと目を瞑る。

「ヒヤァッ！？」

首を擦られ変な声が出た。

「おやおや、驚かしてしまいましたか」

「アルカディスッ！！」

「逃げるわよ！マグマトロンとガイルダートの所にも顔を出さなきゃいけないんだからっ」

「あ、ちょっ、らっ、乱暴に引っ張らないでくださーいっ」

また散歩が始まる。

「そう怒らないで下さいよ、セイバーバックさん。単なるスキンシップじゃありませんか」

「セクハラの間違いだろっ！！まったく……」

「なんであれ、お二人が仲良くして下されば好都合です」

「お前にもそんな心があったのか……ん？好都合？」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。
名無しさんを手に入れるにはまずはD-NAVIを懐柔するのが得策ですねぇ」

「美しくない……！」





「モテ過ぎるのも大変そうね」

「からかわれてるだけですよ」

みなさんからしたら私は見た目も大きさも全然違うし、きっと恋愛対象にはならない。

「ハァ……嫌な予感がしたらすぐ逃げなさいよ。アンタってボヤボヤしてるからなんかしんぱ…………喋るなって言ったわよね？」


「わ、ワン」