これからの話をしよう/天童覚
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読んでいた教科書の内容だって、特におもしろい事は書いていないはずだし、何かおもしろいハプニングがあったわけでもない。
それでも確実に何かが彼の笑いのツボを刺激したのは間違いなかった。天童君の目は教科書に釘付けだった。
…何か面白いことでも書いてあったっけ?
噴き出してしまった後も、天童君はお腹をおさえて声を殺して笑っている。
「何がおかしい」
「…っ、すんません」
言いながらもまだ天童君は笑っている。
教科書を持つ手は震えていた。そんなに面白いことってなんだろう、とちょっとだけ気になった。
先生がつかつかと足早に近づいてきて、私の背後で足を止めた。
…何か、視線を感じる。
背中から突き刺さるような視線に、背中に嫌な汗が流れた。
「…黒崎、お前教科書はどうした」
「……」
こういう時、教室がしんと静まり返るのってなんでなのかな。
重苦しい空気が、これから始まる叱責の予兆のように思えて仕方ない。
天童君に貸しました、って正直に言うのはなんだか気が引けた。
天童君に罪をなすりつけるみたいな気がして。
…いや、そもそも天童君が教科書忘れたのが原因なんだよね。
私は何も悪くない…よね。
「センセー、黒崎さんの教科書ココです」
天童君はそう言って、持っていた教科書を軽く持ち上げて見せた。
途端、鋭い視線が私から天童君へと移る。
「お前のはどうした。忘れたのか」
「…はい。すみません」
「あれほど言っているだろう! 忘れ物をするのはたるんでいる証拠だと!!」
大音量の叱責に、思わず体が縮こまってしまう。
そんなに怒鳴ったって、教科書が沸いて出るわけじゃないのに。
…なんて口が裂けても先生には言えないけれど。
授業時間が減ってしまうのもお構いなしに、多田野先生はグチグチと天童君を叱った。
私を間に挟んで先生が怒鳴るものだから、私も一緒に怒られている気分になる。
先生の叱責に、天童君は何度も頭を下げて謝るのを繰り返していた。
ちょっぴりめんどくさそうな顔をしながら。
そんな顔をしているのがバレたら、余計に先生に火をつけそうなのに。
横にいる私はヒヤヒヤしてしまう。
──…長いお説教の後、先生が思い出したように天童君に尋ねた。