これからの話をしよう/天童覚
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だけど、やっぱり彼は人のテリトリーに勢いよく踏み込みすぎるきらいがある。
お互い何の感情も抱いていない間柄のはずなのに、この近すぎる距離感は何なのだろう。
先ほどの資料室での出来事が頭をよぎる。
笑顔の天童君と目を合わせられなくて、俯いてしまう。
天童君は先ほどの事を気にしているそぶりをこれっぽっちも見せない。
私ばかり意識しているみたいで、恥ずかしい。
『なんか、したかったから』
そんな理由でキスしてしまう天童君のことだから、きっとあんなのなんでもないことなんだ。
こうやって口元を拭うことだって、大した意味はない。きっとそう。
意識しているのは、私だけなんだ。
「…どしたの? 黒崎さん」
ふっと目の前が暗くなって、天童君の声が近くなる。
「…もしかして、さっきの思い出した?」
天童君は耳元でそう囁いた。
瞬間、顔が熱くなるのを感じた。
まただ。
一体、彼は何を考えているのだろう。
勇気を振り絞って天童君を見上げる。
意味ありげな笑みを浮かべて、私を見下ろしている天童君にぞくりとした。
何がしたいんだろう。
人の心をかき乱して、彼は一体何がしたいの。
困惑する私を見て、天童君の笑みはますます不気味なものになっていく。
恐怖、とはまた違う、得体のしれない、正体不明のモノに対する理解しがたいという感情が湧き上がってくる。
「黒崎さんてカワイイね」
そう言い残して、天童君は体育館へと消えていった。
天童君の姿が見えなくなると、一連のやり取りを遠巻きに見ていた同学年の部員達がわっと駆け寄って来た。
取り囲まれてはやいのやいのと詮索が始まった。
「え、え、何?! 彼氏?? 美咲ちゃんいつの間に?!」
「ちょっと詳しく教えてよ!」
恋バナが好きな子達のテンションが、目に見えて上がっている。
普段そういう類の話をしない私だから、余計に気になっているのかもしれない。
でも、彼女たちの期待に応えられそうにはない。
だって、私と天童君はただのクラスメイトで。
それもつい最近席が隣になって、話したくらいの浅い関係だ。
「…違うの、そんなんじゃなくて…」
「違うって? あんなに顔近づけてただのお友達って雰囲気じゃなかったけど?!」
「…うーん、あの人、人との距離が近すぎるみたいで…」
「えー? 何か隠してない?」