春風/田中龍之介
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黒い中折れ帽、Vネックの白いシャツの上には黒いジャケット、迷彩柄のパンツ。この間のラフな感じとはまた違った雰囲気にドキッとする。
首元にはシルバーのネックレスが見えた。
オシャレなんだなぁ、田中くん。
高校の時も、社会人になってからも、お互い私服を見る機会はほとんど無かったからなんだか新鮮だった。思わず田中くんの私服姿に見とれてしまっていたら、田中くんは心配そうに口を開いた。
「何だよ、なんか変か???」
「えっ、ううん。変じゃないよ。オシャレだなぁって思って」
「マジか!……っし!」
田中くんは何故か後ろでこっそりガッツポーズを取っていた。オシャレだと褒められたのがそんなに嬉しかったのだろうか。そんな田中くんが可愛く見えて、微笑ましく思った。
「わ、笑うな! ……俺、ちゃんとした服持ってねぇから、こないだ買いに行ったんだよ。自分じゃよく分かんねぇから店の人に勧められるまま買ってよ」
「田中くんも?」
「え、ってことはお前も……?」
「う、うん。私もあんまり服に頓着してなかったから、いい機会だし服買ったんだ。けど、私も選びきれなくて店員さんに選んでもらって」
「へぇ……めっちゃ似合ってんじゃん。そういう、かわっ、んんっ!…可愛いの、似合うよな、黒崎」
「あ、ありがとう……田中くんも似合ってるよ、すごく」
「お、おう。サンキュ。……んんっ、い、行くか!飯食いに」
何故かお互い褒め合いをしてしまって、お互い照れていた。田中くんは途中何度も咳き込んで、恥ずかしそうにしていた。
私と同じように、田中くんも今日の為に新しく服を買っていた。そこに至るまでの感情は、私とは少し違うかもしれないけれど、わざわざ新しい服で私との食事に来てくれたことが嬉しかった。
ほんの少しだけ、淡い期待を抱きながら、田中くんに連れられるまま店へと向かった。
田中くんが連れてきてくれたお店は、外観からしてもオシャレな雰囲気のお店だった。可愛らしいアーチ型の入り口をくぐってお店に足を踏み入れた。
どうやら田中くんはわざわざ予約を入れてくれていたらしい。田中くんが店員さんに名前を告げると、奥の席へと案内された。