春風/田中龍之介
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それから2週間後、たまたま私と田中くんの休みがあって、約束通り食事に行く事になった。約束を交わした次の休みには、新しい服を買いに行った。
それまで生活費以外に消えることのなかったお給料。折角の田中くんとの食事だから、少しでも印象が良くなるように。彼の好みなんて知らないから、好みにどんぴしゃな恰好は出来ないかもしれないけど。
溢れる様々な洋服達に、私は迷いに迷っていた。あんまり気合を入れすぎても引かれそうだし、かといってラフすぎてもよくない気がするし。
「田中くんの好みか……」
私は服にこれといった好みのテイストがあるわけじゃなかったから、余計に悩んだ。なんでもかんでも田中くんの好みに合わせるのも違う気がするけど、やっぱり少しでも好みに近づけたらいいよね。
田中くんの好み。そういえば、田中くんは高校の時ずっと1人の先輩のことを追っかけていたっけ。清水、潔子先輩。
すらりとしたスタイルのいい美人の先輩だった。彼女が着そうな服だったら、もしかしたら田中くんの好みかもしれない。
ああでもそれって、清水先輩が着るから田中くんの好みになるのかもしれない。私が着たところでなんとも思わないかもしれない。
ぐるぐるとそんなことを考えて、手に取った大人っぽい服をハンガーに戻した。
結局自分では決めきれなくて、店員さんに相談して服を購入した。購入したのは、上下で色が別れたワンピース。上は白いブラウス調で、下は薄いライトブルー。ウエストより少し上で切り替えてあって、ライトブルーの大ぶりなリボンがついている。
「ちょっと可愛すぎたかな……?」
食事に行く当日。クローゼットにかけたままだったワンピースを着て、姿見の前でくるくると回って何度も確かめる。買う時にも店員さんが呆れるほど確認を重ねたのに、今になってもっとカジュアルなものにすれば良かったかな、なんて思う。
悩む私を急かすように、携帯のアラームが鳴った。約束の時間まであと30分。
もう一度だけ姿見を見て、くるりと一周回る。大丈夫。いける。いけるはず。何度も自分に言い聞かせて、私はようやく家を出たのだった。
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「おっす!黒崎、早いな」
「田中くんこそ」
待ち合わせ場所には、もう田中くんの姿があった。