春風/田中龍之介
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「あのさ!」
急に田中くんが顔をあげた。その目は真剣で、バレーをしていた時の田中くんを思い起こさせた。そんな目で見られたら、視線をそらすことなんて出来ない。
「俺に、ついてきてくれねぇか!」
一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
ついていく。田中くんに? 私が? ついていくって、それはつまり。
ぽかんとしたままの私に、田中くんは顔を真っ赤にさせて言葉を続けた。
「俺、お前とずっと一緒にいたい、って思ってんだけど。駄目か?」
「……それって、プロポーズ……?」
私の言葉に田中くんはゆっくりと頷く。言われたことが信じられなくて、私は何度も目をしばたたかせた。
だって、私達。ただの友達でしょ?
田中くん、いつから私のことそんな風に見てたの?
「でも私達、付き合ってないよね?」
疑問を口にすると、赤い顔をした田中くんの目がまん丸になった。
「……えっ?」
「…えっ??」
田中くんの反応に、私も驚いてしまった。
「だって、付き合おうとかそういう話してないし……」
好きとかそういうこと言われたことないし。
手をつなぐとか、キスするとか、恋人らしいことだってしていない。
「……マジか……!」
「?」
「いや、ごめん、俺勘違いしてた。……俺は、好きじゃなきゃ2人でメシとか行かねぇって思ってたんだけどよ。…そうだよな、そんなんじゃなくても別にメシ行ったり遊び行ったりするやつもいるよな……うわ、マジ俺気持ち悪いな。ゴメン、1人で舞い上がって……」
「……いや、私は好きだよ、田中くんのこと。高校生の時から、ずっと」
「!?」
考えるよりも先に、言葉が飛び出していった。
ムードとかそういうの何にも考えてなかった。
好きなのに今までお互い何も言わないでいたこととか、告白すっとばしてプロポーズされたこととか、色々言いたいことあったのに、なんかもうそんなのどうでもよくなった。
「高校の時から、ずっと好きだったよ。……だから、さっきのプロポーズびっくりしたけど、すっごく嬉しい。ありがとう」
「……!!」
「た、田中くん大丈夫?」
「……っ、だ、大丈夫なワケあるか!! そんな前から両想いだったの分かって、大丈夫なワケねぇよ!!」