春風/田中龍之介
名前変換はココで! ⇒の「ⅴ」をクリック
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ひらひらと舞い散る薄桃色の花びらの中を、慣れないヒールで駆けて行く。
何度季節が巡っても、学生時代から緊張しいな性格は今も変わらず。初出社を前にして、私は不安でいっぱいだった。昨日だって全然眠れなくって、目の下のクマは化粧をしてもうっすらと顔を出している。
「わっ!」
そんな声とともに、私は盛大に地面に抱き着いた。あぁ、真新しいスーツが。鞄が。ストッキングは破れてないかな。替え、鞄に入れてたかな。
「大丈夫ですか!!!」
派手に転んだままの私の横を、足早に通り過ぎていく人が多い中で、誰かが心配そうに駆け寄ってくる音がする。降りてきた影は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
見上げた先の顔は、逆光のせいでよく見えない。思わず目を細めたけれど、状況は変わらなかった。ただ、そのシルエットで、声をかけてくれたのはお巡りさんだということは分かった。
「あ、だ、大丈夫です……」
「立てます? 足、挫いたりしてないっすか?」
「多分……大丈夫だと思います」
お巡りさんが手を貸してくれて、私は立ち上がった。体についた砂を払って、派手に伝染してしまったストッキングが目に入りため息をつく。
立ち上がった私を確認して、お巡りさんは道端に散らばった荷物を拾い始めた。慌てて私も彼の後を追って、荷物を回収する。
「すみません、ありがとうございました」
「いえ! 大きな怪我なくて良かったですね!」
頭を下げた私に、お巡りさんは白い歯を見せて、にかっと
笑った。その笑顔に、私は既視感を覚えた。
「……た、なかくん?」
口をついて出た、高校時代の級友の名前。もしかしたら他人の空似かもしれない。間違っていたら恥ずかしい。
けれど、目の前のお巡りさんがすごく驚いた顔をしたから、間違いではないみたいだ。彼は、あの、田中くんだ。
――田中、龍之介くん。
「えっ、俺の名前なんで知って……」
田中くんは驚いた顔のままで、固まってしまっていた。私が誰なのか記憶の中を必死で探っているのだろう。だけど思い当たる人物がいないのか、驚き困惑したままだ。
「私、黒崎美咲です。高校2年の時、同じクラスだったんだけど……覚えてないかもね」
何度季節が巡っても、学生時代から緊張しいな性格は今も変わらず。初出社を前にして、私は不安でいっぱいだった。昨日だって全然眠れなくって、目の下のクマは化粧をしてもうっすらと顔を出している。
「わっ!」
そんな声とともに、私は盛大に地面に抱き着いた。あぁ、真新しいスーツが。鞄が。ストッキングは破れてないかな。替え、鞄に入れてたかな。
「大丈夫ですか!!!」
派手に転んだままの私の横を、足早に通り過ぎていく人が多い中で、誰かが心配そうに駆け寄ってくる音がする。降りてきた影は心配そうに私の顔を覗き込んだ。
見上げた先の顔は、逆光のせいでよく見えない。思わず目を細めたけれど、状況は変わらなかった。ただ、そのシルエットで、声をかけてくれたのはお巡りさんだということは分かった。
「あ、だ、大丈夫です……」
「立てます? 足、挫いたりしてないっすか?」
「多分……大丈夫だと思います」
お巡りさんが手を貸してくれて、私は立ち上がった。体についた砂を払って、派手に伝染してしまったストッキングが目に入りため息をつく。
立ち上がった私を確認して、お巡りさんは道端に散らばった荷物を拾い始めた。慌てて私も彼の後を追って、荷物を回収する。
「すみません、ありがとうございました」
「いえ! 大きな怪我なくて良かったですね!」
頭を下げた私に、お巡りさんは白い歯を見せて、にかっと
笑った。その笑顔に、私は既視感を覚えた。
「……た、なかくん?」
口をついて出た、高校時代の級友の名前。もしかしたら他人の空似かもしれない。間違っていたら恥ずかしい。
けれど、目の前のお巡りさんがすごく驚いた顔をしたから、間違いではないみたいだ。彼は、あの、田中くんだ。
――田中、龍之介くん。
「えっ、俺の名前なんで知って……」
田中くんは驚いた顔のままで、固まってしまっていた。私が誰なのか記憶の中を必死で探っているのだろう。だけど思い当たる人物がいないのか、驚き困惑したままだ。
「私、黒崎美咲です。高校2年の時、同じクラスだったんだけど……覚えてないかもね」
1/16ページ