マカロンにまつわるエトセトラ/東峰旭
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「そこのマカロンなんかどうかな?可愛くデコレーションされてて、味の種類も多くて、美味しかったよ」
言って、黒崎はスマホを取り出して、先日撮った写真を画面に表示させた。
東峰が興味深そうに黒崎の手元を覗き込む。
写真には色とりどりのマカロンが並んでいた。
どれもカラフルで、花やリボンやキラキラ光るビーズのようなもので可愛らしく飾り付けされていた。
なるほどこれは女子が好きそうだ、と東峰も納得する。
「ちょっと、高いかもしれないけど……でもこれだったら喜ばない子はいないんじゃないかなぁ」
「そうだな。女の子が好きそうな感じだな。うん、谷っちゃんも清水もこれなら喜んでくれるかな。ありがとう、黒崎」
谷っちゃん。
その単語に、黒崎の胸はチクリと痛む。
(1年生マネージャーの子のことは「谷っちゃん」って、あだ名で呼ぶんだよね。清水さんはずっと「清水」って苗字で呼んでるのに……私の事も、ずっと苗字だったな。)
自分が行動を起こさなかったから、東峰との距離が縮まらなかったのは黒崎も百も承知だった。
けれど自分なりに、努力はした「つもり」だった。
その努力が足りなかったのだろうけれど。
東峰の試合を観戦した時に、「谷っちゃん」と呼ばれるマネージャーの子の姿は見たことがあった。
少しだけ会話もした。
小柄で可愛らしくて、男子からしたら守ってあげたくなるような、そんなタイプの子だった。
東峰の好きなタイプを聞いたわけではないが、きっと東峰も嫌いではないだろう。
「谷っちゃん」に接する時の東峰はいつもより雰囲気が柔らかい気がしたので、黒崎は余計にそう思った。
「あー、そこ知ってる。すっげーメルヘンチックな店だろ?東峰なんかがいったら場違いすぎて通報されんじゃね?」
東峰と黒崎の会話を聞いていたクラスメイトの声に、黒崎の意識はこちら側へ引き戻された。
「そこに男1人で行くのきっついと思うけどなぁ」
「そ、そうかな……。でもせっかく黒崎がおススメしてくれたお店だし……」
東峰は困った顔でクラスメイトと黒崎を交互に見やる。
アイディアを出してもらった手前、目の前で「やっぱりやめた」とは言い出しにくいのだろう。