星を見る少年
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病院ではじめ君に会ってから、数日後。
電車を待つ間、私は読書に夢中になっていた。
「今晩は」
声がして、目を落としていた本から顔を上げると、制服姿のはじめ君が立っていた。
「今晩は。今、帰り? ずいぶん遅いんだね」
「部活終わってから、残って自主練してたんで」
そういえば、はじめ君はバレー部だって、初枝さんが言ってたっけ。
もうすぐ試合が近いとか。
肩に掛かった大きなスポーツバッグを見れば、バレーボールのキーホルダーと黒い怪獣のワッペンがくっついている。
揺れるバレーボールのキーホルダーに、はじめ君のバレーに対する気持ちが表れてるみたいだ。
バレー、すごく好きなんだろうな。
「6月に試合があるんだよね。インターハイ予選、だっけ」
「あ、はい。……なんで知ってんすか?」
はじめ君から直接聞いたわけじゃないから、はじめ君が不思議に思うのも無理はない。
「初枝さんがね、話してくれたの」
「ばあちゃん……他に、何話してました? なんか変なこと言ってねぇっすか?」
自分の知らないところで、何を話されているのか、はじめ君は気になって仕方がないようだった。
ぶっきらぼうな感じのはじめ君が、困った顔で尋ねてくるものだから、ちょっとだけからかいたくなった。
「うーんとね……6月10日が誕生日でしょ。好きな食べ物は揚げ出し豆腐。バレーは小学生の頃から続けてて、幼馴染みの及川君と長らくいいコンビを組んでるってのも聞いたし……あと最近文字入りTシャツ探すのにハマってて、スマホのケースをこの間ゴジラのに変え…」
流れるようにはじめ君にまつわる情報を口に出していくと、横で聞いていたはじめ君の目がどんどん見開かれていった。
止まるところを知らない私の口の動きに、さすがにはじめ君から「待った」の声がかかる。
「…もう、いいっす。…ったく、ばあちゃん何話してんだよ……」
ガリガリと頭を掻いてはじめ君は恥ずかしそうにしていた。
少しからかいすぎてしまったかな。
「ごめん、調子に乗っちゃった」
「……いや、正直に答えてくれただけっすから。別に気にしてないっす」
はじめ君の返事に、彼のことをからかおうなんて思った自分が大人げなくて恥ずかしく思えてくる。