星を見る少年
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時計は午後15:30を指していた。
今日は準夜勤の日。
今から夜中0時過ぎまで勤務だ。
白衣に袖を通す。
パリッとした白衣を身につけると、自然と身も引き締まる。
昼勤務の看護師から引き継ぎを受け、1日の業務が始まった。
「ーー……それでね、来月に孫の試合があるのよ。だからなんとしてでもその日までには歩けるようにならないと」
病室に入るなり声をかけてきた初枝さんが、ベッドの上で握り拳を作って意気込んでいる。
初枝さんは、いつもにこにこ笑顔の絶えない患者さんで、話し好きな明るいおばあちゃん。
まだぎこちない私の対応にも笑顔で「誰だって初めは慣れないものよ」と言ってくれるような優しい人だ。
そんな初枝さんには、自慢のお孫さんがいるらしい。
初めて会ったその日から毎日、初枝さんから孫の『はじめ君』のことを聞かされている。
「ふふ、きっとはじめ君も喜ぶでしょうね。初枝さんが応援に来てくれたら」
「そうねぇ。私が言うのもなんだけど、あの子おばあちゃん子なのよねぇ」
クスクスと初枝さんが笑うと、背後から咳払いのようなものが聞こえた。
「ばあちゃん好き勝手に話すんなよ」
「あら、はじめちゃん。お見舞いに来てくれたの?」
初枝さんの言葉に、くるりと後ろを振り返ってはじめ君に笑顔を向けた。
振り返った先の男の子は、この間駅のホームで私を助けてくれた子だった。
「この間の……」
「この間?」
はじめ君は、私が誰だか分からないみたいだった。
駅で会ったときは私服だったし、髪も下ろしていたから、看護師の格好をしていたら分からないのかもしれない。
それに一度会ったきりだから、もしかしたら覚えていないのかも。
はじめ君は眉根を寄せて、私の顔をじぃっと見つめている。
私が誰か思い出そうとしているのだろう。
険しい表情のはじめ君の視線がふと私のおでこあたりを見て、小さく「あ」と声を上げた。
「思い出した。駅のホームで落ちそうになってた人か」
おでこに浮かぶ傷を見て、はじめ君は思い出したようだった。
それってあの派手に転んだシーンをバッチリ見られてたってことだよね。
……恥ずかしすぎる。