星を見る少年
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「…美咲、さん……」
嘘だろ。
俺の目が捉えているのは、夢幻なんかじゃねぇよな。
拗らせて幻覚でも見ているのかと、自分の頬をつねった。
「はじめ君、久しぶりだね。…どうして頬つねってるの?」
その声を聞いてようやく、これが現実なんだと納得できた。
遅れをやってきた頬の痛みに、この確かめ方ってあんまり意味ねぇんだなと笑ってしまった。
「…なんでもねぇっす。元気でしたか」
「……うん。元気だったよ。…初枝さんが退院して以来だね、会うの。ほんと、久しぶりだ」
夏の終わり頃には、胸下まであった長い髪は、バッサリと肩の辺りで切りそろえられていた。
すっかり雰囲気が変わってしまっていたが、笑うと三日月みてぇになる目が、美咲さんであることを主張している。
縁があれば、また会えると。
どうかその縁がありますようにと願った糸の先に、今ようやく出会えた。
このチャンスを逃がしたら、もう2度目はねぇかもしれねぇ。
焦る気持ちは、整理できないまま口から飛び出していた。
「あのっ、美咲さん! これ一緒に行きませんか」
差し出した先ほどのビラに、美咲さんは目をぱちくりとさせた。
挨拶もそこそこに、何言い出してんだ俺。
もっと段階ってもんがあるだろうに、バカか。
後悔し始めている俺をよそに、美咲さんの目は次第にきらきらと輝きを増していった。
欲しい物を買ってもらえた子供みたいな目の輝きに、驚くと同時に可愛くて仕方なくなる。
「獅子座流星群観測ツアー……行く! 行きたい!!」
まさか即答されるとは思ってなくて、一瞬言葉に詰まった。
嬉しいとか良かったとか、溢れ出てくる気持ちがダダ漏れにならねぇように、後ろ手に回した手で背中をつねった。
「こういうの家族連れとかカップルが多いからさ。1人だと行きにくくて。誘ってもらえて嬉しい」
「そっすか」
いやもっとこう、何か他に言うことあんだろ俺!
脳内で叫ぶ俺がいるのに、現実の俺は何一つ言うことを聞かねぇ。
ぶすっと口をへの字に曲げて、ぶっきらぼうに答えるしか出来なかった。
テメェから誘っといてその態度はねぇだろう。
自分でもそう思うのに、意識し出すと表情はますます硬くなるばかりだった。