星を見る少年
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及川の言葉は最もだった。
というのも、最近美咲さんに会えていない、という事実が目の前に横たわっていたから。
ばあちゃんが無事に退院して、病院に行く機会が無くなってしまった。
加えて、生活リズムがズレているのか駅で会うことも無い。
今まで病院か駅かでしか会うことが無かったから、その2つで出会えなければ進展も何も望めねぇ。
募る想いに耐えきれなくなって、とうとう及川に相談したところ、先ほどの及川の発言に至った。
「…聞くタイミングなんか無かったんだよ」
「タイミングなんてねぇ、待ってちゃダメだって。自分で作ってくもんでしょ」
「いや無理だろ。どんな顔して聞くんだよ。連絡先要るような用なんかねぇのによ」
もう飲み物はカラだって分かってんのに、溶けた氷の僅かな水を音を立てて吸い上げる。
賑やかな店内にあってもよく響いた音に、耐えかねたのか及川が俺から紙コップを取り上げた。
「またハンカチ貸してあげたんでしょ? 『そのハンカチ返す時連絡くれ』って言って、連絡先聞けば良かったんじゃん」
「その場で返してもらったし」
「えー…その時美咲ちゃん言わなかった? 『洗って返すね』とかさ」
「言った。けど断った」
だから岩ちゃんはバカなんだよ、と呆れた顔で溜息をこっちに吐き出す及川の足をテーブル下でおもいくそ蹴った。
バカバカ連呼されると、ムカつくんだよ。
自分でも馬鹿だと分かってるから余計腹が立つ。
「外野の俺らは、ああ出来た、こう出来たって思うけど。当事者は全然頭回らなかったりするよな」
向こう脛を蹴られて涙目になった及川に代わって、松川が口を開く。
松川みてぇに冷静に話してくれると素直に話を聞こうと思う。
及川だけでなく松川達がいてくれて良かったと思った。
「まして初恋なんだろ?岩泉。それでなくとも駆け引きとかそういうの苦手そうなタイプだけど」
「マッキー、違うよ。岩ちゃんの初恋はね、幼稚園の時の、ゆみ先生」
「まじか。そんなガキの頃から年上好きだったんだな岩泉。筋金入りじゃん」
「バカ川、何昔の話してんだ」
蹴られた腹いせか、古い話を持ち出した及川に、テーブルの下で攻撃するも、流石に2度も引っかかりはしなかった。
及川はひょいと足を動かして、俺の攻撃をなんなくかわす。
空振った俺のつま先は、空をさまよった。