星を見る少年
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ありがとう」
あまりに彼が自然に差し出してきたものだから、私も素直に彼の厚意を受け取った。
綿素材の薄手のハンカチは、すっと涙を吸い取っていく。
幾度か涙を拭うと、ハンカチは青から紺へと変色して涙の痕跡をくっきりと浮かび上がらせていた。
「…何があったか知らねぇっすけど、死ぬ以外のこと考えて下さい」
本当に、自殺する気なんてさらさらなかったんだけど、彼にはどうもそうは思えなかったみたいで。
急に泣き出すような情緒不安定な女を見たら、流れ星の話も自殺しようとしていたのを誤魔化すためのウソだって思われても仕方ないかもしれない。
死ぬつもりはないんだ、っていくら弁解したところで彼は納得しそうにない顔をしていたから、言葉を飲み込んで静かに頷いた。
「岩ちゃん、何お姉さん泣かしてるの?!」
ハンカチを貸してくれた男の子の背後から、声が飛んできた。
ゆるく跳ね上がった暗めの茶色の髪を揺らして、ハンカチの子と同じ制服を着た男の子がこちらに駆けてきている。
その子に続いて後からまた2人、同じ制服の子達が歩いてきていた。
「クソ川人聞きの悪いこと言うな。 …別に俺が泣かせたんじゃねぇよ」
赤の他人にハンカチを貸してくれるような優しい子から飛び出た「クソ川」という言葉に驚いたものの、言われた方の男の子はあまり怒っているようには見えなかった。
軽口のうちに入るのだろうか。2人の仲は悪くなさそうだけれど。
「クソはやめてよ、クソは! でも俺さっき見ちゃったよ? 岩ちゃんがお姉さんの腕掴んで引っ張ったとこ。あんな乱暴なことしちゃダメだよ、岩ちゃん」
「ああでもしねぇとこの人ホームから落っこちまってただろうが」
「それにしたってもっとやり方があるでしょ。ホント岩ちゃんってば女性の扱い方分かってないんだから」
「あ? 喧嘩売ってんのかクソ及川」
仲がいいのか悪いのか喧嘩しそうな雰囲気を感じて、思わず2人の会話に口を挟み込んでしまう。
「ごめんなさい!」
唐突に謝罪した私に、2人ともぽかんとした顔でこちらを見ていた。
「なんでお姉さんが謝るの?」
茶色の髪の、及川君が首をかしげる。
「私がぼうっとしてたのが悪かったから。喧嘩しないで」
一瞬間が空いて、目の前の2人は同時に首を振った。
「こんなん喧嘩じゃねぇし」
「喧嘩じゃないよ」