星を見る少年
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「少し脈拍が早いかな…他に変わった所はない? 熱は?」
そっとおでこに手を当てると、はじめ君の目が大きくなった。
そしてそのまますっと後ろに下がって、首を振る。
触られたのが嫌だったのかな。
「…大丈夫っす!」
大きな声に驚くと、はじめ君が申し訳なさそうな顔になった。
私に向けて突き出された手は、それ以上関わってくれるな、と言っているようだった。
「すんません。本当、大丈夫です」
「でも…」
医療に携わる者としては、不調を訴える人を放ってはおけない。
お節介に思われるだろうけれど、体の不調を放っておいていいことなんてひとつもないし。
だけど目をそらしたままこちらを見てくれないはじめ君に、これ以上近付くのは無理そうだった。
他人にベタベタ触れられるのが嫌なタイプなのかもしれない。
「何かあってからじゃ遅いから。ちゃんと病院で診てもらってね」
「…ッス」
なんとなく、はじめ君との間に壁を感じて、それ以上体調の話には触れなかった。
気まずい空気を変えようと、話題を変えることにした。
「あ、そうそう。これありがとう。ずっと借りててごめんね」
はじめ君に借りていたルールブックを差し出すと、はじめ君の背後から徹君がひょっこり顔をのぞかせた。
「その本懐かしい!」
「っ、及川いつからそこに?!」
「えー? 岩ちゃんが美咲ちゃんに脈測ってもらってるあたりから?」
「んだよ、なら早く声かけろよ!」
はじめ君が怒ると、徹君は舌を出して「ごめーん」と気の抜けた謝罪をはじめ君によこした。
「だって邪魔しちゃ悪いかなぁと思ってさ」
「余計な気遣うな」
2人のやりとりを見ていると、仲の良さが伝わってきて、つい笑みが浮かんでしまう。
一見喧嘩みたいに見えるじゃれ合いも、長い付き合いの彼らだからこそ出来ることだと、最近分かってきた。
「ふふ、ほんとに2人、仲がいいね」
「違ぇっす。ただの腐れ縁ってやつです」
「ひどいや岩ちゃん」
腐れ縁だって、はじめ君は否定するけれど。
2人の絆の深さは、この本にも書いてある。
「“もくひょう→おいかわとふたりで、さいきょうのセッターとスパイカーになる!”」
ぽかんとした表情の2人に、件の言葉が書かれたページを開いて見せる。
じっとそのページを凝視した後、はじめ君の顔は真っ赤になり、徹君はお腹を抱えて笑い出した。