星を見る少年
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でもまさか本を持ってきてくれるなんて思ってもみなかったから、私は差し出された本をまじまじと見つめたまま固まってしまっていた。
「あ…すんません。そこまで興味ねぇッスよね」
本を受け取らずにいたのを、やんわりとした拒否だと思ったのか、はじめ君が本を鞄にしまおうとした。
慌てて首を振って、鞄に向かう手を掴んだ。
「ううん! 興味あるよ!」
「っ、そっすか。なら、良かった」
「まさか本貸してくれるなんて思ってなかったから、驚いただけ。ありがとう、はじめ君」
「…ッス」
笑顔でお礼を言うと、何故かはじめ君は目をそらした。
すぐに受け取らなかったから、社交辞令でしぶしぶ受け取ったとか、もしかして思われてる?
本当に、はじめ君の気持ち嬉しかったのに。
ささいな言葉を覚えててくれて、気を遣って本まで貸してくれて。
その日は嬉しかったのもあって、早速電車の中でルールブックをじっくりと読み進めていった。
******
まだ、美咲さんが触れた感触が残っている。
あの人が掴んだ場所は、ほんのりと熱を放っている。
すっげぇ柔らかい手だった。
かさついた俺の手とは全然違う、ちっちゃくて柔らかい手。
手を掴まれた瞬間、心臓も鷲掴みにされたような感覚に陥った。
苦しいのにどこか心地良い、変な感覚。
今まで経験したことのない感覚に、戸惑いを覚えている俺がいる。
この感覚は、何なんだ。
「どうしたの、岩ちゃん。顔赤いけど」
「は?」
隣で同じように電車に揺られている及川が、自分の顔を指さしながら言ってきた。
「か・お。耳まで赤いけど。熱でもあるんじゃない?」
「バカ言え。俺は元気だぞ」
風邪なんかほぼひかねぇけど、熱出たらさすがに自分でも気付く。
自分の体調は自分が良く分かってる。
「えー、自覚無しってコワい。俺にうつさないでよ?」
「だから病気じゃねぇって」
病気じゃないなら、何なんだ。
やっぱ風邪でもひいちまったのか、俺。
いや心臓に何か問題でもあるのかもしれねぇ。
さっき美咲さんと話してた時、胸がギュッと苦しくなったからな……。
「…なぁ、心臓って何科に行きゃいいんだ?」
「えっ、なに急にどしたの岩ちゃん。やっぱどっか具合悪いの」
「分かんねぇけど、ちょっと気になって」
「早いうちに診てもらいなよ。若いと病気の進行も早いんだから」