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湯上がりの上気した肌が、黒崎の綺麗な顔をさらに美しく見せていた。
どくどくと胸の音は高まり、黄金川の体温はいやでも上がっていった。
「寝るところ邪魔してごめん。…寝る前に、もう一度きちんとお礼を言っておきたくて」
「もう充分聞きましたよ。美咲さん気遣いすぎっす」
「ううん…本当に、貫至くんには助けられてばかりで…」
言って、黒崎は黄金川の両手をぎゅっと握りしめた。
ほんのりと温かい手のひらと、その柔らかな感触に、黄金川は思わずその手を握り返しそうになる。
握りしめた手をじっと見つめて、黒崎はぺこっと頭を下げた。
「本当にありがとう。…貫至くんがいてくれて、良かった」
顔を上げた黒崎と目が合った黄金川は、自分を見上げる彼女の可愛さにめまいさえ覚えていた。
長い睫毛がぱちぱちと動く度に、黄金川の心臓も跳ね上がる。
「…ごめん、貫至くんも疲れてるよね。もう寝なくちゃね」
「俺は、全然…美咲さんこそ、ゆっくり寝てください。何かあったら俺起こしてください」
「うん。ありがとう。…それじゃ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
静かに閉まっていく扉を名残惜しそうに見つめて、黒崎も部屋へと戻った。
黒崎が部屋へ帰ったあとの黄金川は、目がさえに冴えていた。
湯上がりの薄らと桃色になった肌と、しっとりとした艶髪、うるんだ瞳。
それだけでも黄金川の心を揺らすのに十分だというのに、ふいに触れられた手。
柔らかな肌の感触は、いつまでたっても消えそうに無い。
その日黄金川はぐっすり眠れずに、翌朝を迎えた。
******
「貫至くん、おはよ」
「はざまーっす…ふぁぁ」
寝ぼけ眼の黄金川とは正反対に、身支度をすっかり済ませている黒崎は黄金川の母と共に朝食をとっていた。
美味しそうな匂いにつられて黄金川は寝間着姿のままテーブルにつく。
「もうこの子は! だらしないねぇ。着替えくらいしなさいよ」
「腹減って目ェ覚めたんだから仕方ねぇだろ」
「着替えくらい空腹でも出来るでしょ! ごめんね美咲ちゃん、こんな息子で」
そこでようやく黄金川の目は、目の前にいる黒崎の姿をしっかりと認識した。
黄金川は慌ててリビングを飛び出し、階段を駆け上がっていった。