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そう言い残して、警官は帰って行った。
考えていたよりもあっけなく帰って行ってしまった警官の後ろ姿を見送りながら、黄金川はずっと震えている黒崎の背をさすりながら、優しく抱き寄せた。
恐怖と心細さからか、黒崎もぎゅっと黄金川にしがみつく。
嬉しい場面のはずだったが、こんな状況では黄金川はそんな気持ちになれなかった。
ただこのまま黒崎をほうっておけず、勇気を振り絞って黄金川は口を開いた。
「あの、良かったらウチに来ませんか?!」
「……貫至くんの…?」
「ここからそんな遠くないですし…美咲さんをこのまま1人にはしておけないッスから」
「貫至くん……」
「うちの親も、事情話せば許可してくれると思います」
黄金川の申し出に、黒崎は少し困った顔で悩んでいる。
まだ付き合いの浅い関係で家に泊まらせるなんて、普通なら考えられないだろう。
けれど今は緊急事態だ。
もし黒崎が遠慮しているのなら、ここは自分が押し切らねばならないかもしれない、と黄金川は思った。
「美咲さんこの間言ってましたよね。誰かにつけられてる気がするって。そいつがやったんだとしたら、やることエスカレートしてきてるじゃないっすか。今は遠慮してる場合じゃ無いっす」
「…いいのかな。そこまで甘えて…」
「良いに決まってるじゃ無いっすか!」
力強い黄金川の言葉に背中を押されたのか、黒崎は黄金川の申し出を有難く受けることにした。
最低限の荷物をつめたバッグと、ギターケースを背負って、黒崎は黄金川とともに彼の家に向かった。
******
家に帰ってくるなり頭を下げてきた息子に、黄金川の母はまた小遣いを使い切ったのか、と溜息をついた。
けれど息子の口から聞かされた願いは全く予想していなかったものだった。
「さぁさぁ入って。貫至から話は聞いたわ。酷いことする人がいたものね」
にこやかに黄金川の母に出迎えられて、黒崎は行儀良く頭を下げた。
大きなギターケースを背負いながら、きちんと脱いだ靴を揃える黒崎の姿に、母の目尻は優しく下がる。
今晩黒崎が寝る部屋を黄金川が片付けに行っている間、黒崎はリビングで黄金川の母とお茶を飲むことになった。