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首をかしげる茂庭に、横から二口が口を挟む。
「例のコンビニの子ですよ。黄金川が一目惚れした」
「ああ! あの人か。どうりで、今日の部活中落ち着き無かったわけだ」
二口の言葉に納得して、茂庭は困った顔で笑った。
部活中は部活に集中してほしいものだが、今までの黄金川を見ていたら、それは無理な注文だったな、と茂庭は思った。
普段の倍のスピードで黄金川が動いたからか、黄金川に気を遣って皆が急いだからか、片付けはあっという間に終わり、黄金川は着替えもせず軽くジャージを羽織っただけで学校を飛び出していった。
先ほど校門をくぐる前に確認した時刻はすでに18:15を回っていた。
ここから全速力で駅まで走っても、間に合うだろうか。
携帯はまだ修理から戻っておらず、黒崎にメッセージを送ることも出来ない。
今日会えなかったら、また彼女との繋がりが消えてしまう。
何より黒崎の生歌を聴けるチャンスを黄金川はみすみす逃したくはなかった。
『絶対行きます!』と送った返事を嘘にしたくない。
そんな想いを抱えて、黄金川は持てる力全て出し切って駅まで走った。
******
『ー…今日、最後の曲です』
駅前広場には、そこそこの人だかりが出来ていた。
黒崎の声はするものの、近くまでは近寄れそうに無かった。
この時ほど、黄金川は自分の長身を喜んだことは無かったかもしれない。
最前列に出られなくとも、人だかりの中で黄金川の頭は周囲から一つ抜きん出ていた。
汗だくで息を切らしながらひょっこり現れた黄金川を、黒崎が見つけるのに時間はかからなかった。
黄金川と目が合うと、黒崎はニコッと笑みを見せた。
自分に向けて笑顔を見せてくれたことに、黄金川の胸はいっぱいになった。
どきどきと心臓の音がうるさいのは、さっきまで走っていたからという理由だけではないはずだ。
この間抱えていたギターケースのギターだろうか。
体の一部のように、黒崎はギターを奏で始めた。
静かな前奏から始まり、そこへ透明感あふれる涼やかな黒崎の歌声がのせられた。
普段はどちらかといえばアップテンポなノリの良い曲を聴くことが多い黄金川だったが、黒崎が歌っているのはゆったりとしたバラードだった。