愛の言葉を聞かせて/天童覚
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「そりゃあ、な。外国に行くんだし。さっき天童は黒崎さんが自分の事大好きなんだって言ってたけど。天童だって黒崎さんの事、大好きなんだろ」
「アハッ、めっちゃ直球投げてくるね」
「好きだから心配なんだよな」
「そーだね……。フランスに連れて行きたいくらいには」
横で寝てる美咲ちゃんが聞いたら、なんて言うだろう。
何もかも投げ出して一緒に行く! なんて言い出しかねないから、本人に言うつもりはないけど。
「…そういう気持ち、ちゃんと言葉にしてあげろよ。お前は時々考えてること分かりにくいんだから。付き合い長いから分かってくれる、なんて思うな」
「……うん」
「フランス行ってもマメに連絡取るんだぞ。天童の方から連絡入れろよ? 間違っても待ちの姿勢でいるなよ?」
「分かってるよ。獅音くんに迷惑かけないように俺も気を付けるって」
俺の言葉が信用ならないのか獅音は何度も念押ししてきた。
そんなに信用ないのかな、俺。
やる時はちゃんとやる男なんだけどな~。
「あ、黒崎さん起きた」
むくりと顔を上げた美咲ちゃんに、おはよ~と手を振る。
寝起きでぼうっとしていた顔が、徐々に険しくなっていく。
あら。これは怒ってるやつ──と思ったのも束の間、口元を押さえながら美咲ちゃんは部屋を出て行った。
「完全に飲みすぎだね、あれは」
テーブルの上に置かれた空になったグラスの数を見れば、どれだけ美咲ちゃんが飲んだか分かる。
大して強いわけでもないのに、飲みたがる悪い癖がある。
将来アル中になんないかちょっと心配。
「俺見てくる」
言って美咲ちゃんの後を追った。
幸いここの居酒屋にある2つのトイレは男女両方使えるトイレだったから、女子トイレに侵入するという危険を冒さずにすんだ。
鍵が閉まっている方に声をかける。
「美咲ちゃん大丈夫?」
軽くノックしてしばらく待っていると、ガチャリとドアが開いた。
「…覚くん、遅いよ」
そっとのぞいた美咲ちゃんの背後は特段汚れてはおらず、どうやら後始末の心配はしなくてよさそうだった。
それでも目の前に立つ美咲ちゃんはまだ気持ち悪そうな顔をしていた。
「ごめん、学校でちょっと色々と立て込んじゃって」
「そうやってまた誤魔化す」
「え?」