愛の言葉を聞かせて/天童覚
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「…天童の事よく知ってて、男の気持ちも分かるからな。黒崎さんが俺のとこに来るのはそのせいだろう」
自分にやましい気持ちはひとつもない、って言外に匂わせてるみたいな発言。
わざわざそういうこと口にしちゃうってことは、そういうことなんだよね獅音。
「別に、言い訳しなくてもダイジョブだよ?」
「言い訳したつもりはないが。…今までずっと気にしてたんじゃないのか? 彼氏として、他の男と会うの気持ちがいいもんじゃないだろ。高校からの付き合いとはいえ」
「んーん。だって美咲ちゃん俺の事大好きだもん。獅音と何かあるって考えられない」
「すごい自信だな。ある意味……尊敬する」
俺がじっと獅音の目を見ると、ゆっくりと目線が下がっていった。
獣と一緒だ。強いと思った相手からは目をそらしてしまうものだ。これは本能的なもの。戦いの意思がないことを示す非言語コミュニケーションだ。
獅音には美咲ちゃんを奪う意思はない。
それを確かめて、まだ口をつけていなかったカクテルを一口飲んだ。
「俺がフランスに行ってる間、美咲ちゃんのことヨロシクね。あんまりお酒飲まないよう気を付けてあげて」
頼めるの獅音しかいないんだよね、って付け加えると獅音は困った顔をしつつ僅かに口端を上げた。
獅音が近くにいれば、他の変な虫が美咲ちゃんに寄って来ることもないだろうし。俺が言わずとも世話焼きな獅音のことだから何かと手助けしてくれそうだけど。
「……ああ」
「飲み会とかで遅くなる時は家まで送ってあげてね」
「…分かった」
「あとちゃんと朝ご飯食べるように」
「お前は母ちゃんか」
獅音がようやく笑った。
さっきまでの妙な空気はどこかへいっていた。
「──やっぱりさ。心配、なんだよ」
空気が緩んで、俺もどこか緩んでしまったんだろうか。
ぽろりと本音をこぼしてしまった。
辛気臭いの苦手だから、こういう雰囲気になるの嫌なんだけど。
それでも獅音には知っていてほしかった。俺がどれだけ美咲ちゃんの事を想っているのかを。
そうすれば獅音に釘を刺しておけるっていう打算もあった。