愛の言葉を聞かせて/天童覚
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「天童とはうまくやってたんだろ?」
「…そう思ってたのは私だけかもしれない」
フォローしてくれようとする獅音くんに、またネガティブな返答をしてしまう。
もやもやした気持ちを抱えているのが嫌で仕方ない。
人をこんなに悩ませておいて、当の覚くんはいまだに姿を見せない。
グラスの中のものをぐい、と一気に飲み干して備え付けの注文パッドのボタンを連打した。
「ちょ、大丈夫かそんなに頼んで」
「獅音くんも付き合って」
「いいけど、まだ天童来てないし。ちゃんと本人に話聞いた方が」
「聞くけど! 飲まずにはいられないの」
私の気迫に押されて獅音くんはそれきり何も言わずに付き合ってくれた。
運ばれてきたアルコールの数々に驚いた顔はしていたけれど、ペース考えて飲めよ、とだけ言う。
「大体さ、高校の時付き合い始めたのだってわけわかんない感じだったんだよ」
「あー…隣の席になってから、ってやつだっけ」
「そう! それまで話したこともなかったのにね、いきなりだよ? 告白とかそういうのすっ飛ばしてキスしてきたんだから」
「そりゃあビックリだな」
「でしょ? あんなの相手が私じゃなかったらセクハラだよ、セクハラ!」
高校2年の時だった。
席替えで、隣の席になった覚くんとひょんなことから話すようになって、ある日突然キスされたのだ。
それまで特に親しい関係というわけでもなかったから、なんでキスされたのか分からなくて驚くばかりの私に、覚くんはゾクリとするような笑みを浮かべて「キスしたかったから、した」と言った。
そんな訳の分からない彼の行動に悩まされているうちに、気が付いたら覚くんのことを好きになっていた。
決して初めてキスした相手だから好きになったとか、そういうんじゃないと思うけど……。
それから付き合いはじめて、なんだかんだと4年続いている。
今まで喧嘩がゼロだったわけじゃない。喧嘩というか、私が一方的に怒るばっかりだけど。
付き合っていてもたまに理解の追い付かない覚くんの行動はあったし、それに私が悩んで文句言っても、覚くんはけろっとした顔で「ごめーん」って言うだけ。
まぁ、その後ちゃんとフォローしてくれるから私も今まで付き合いを続けているんだけれど。
考えてみれば、今日のことも私が一方的に怒ってる感じだ。