走れサンタ!/二口堅治
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次の瞬間には、二口は走り出していた。目標はもちろん、腕を組んで歩くあの二人。片手に握りしめたベルが、二口の全速力に応えるようにリンリンと甲高い音で鳴り響く。
もうあと一歩で二人に手が届きそうな距離まで二口が近づいた時、ベルの音を気にして目の前の二人が二口の方に振り返った。
「……あ」
ばしっと音がしそうなほど、二人と二口の視線が交差した。
しばらくお互い固まっていたが、二人の方が怪訝な顔つきで二口を見やった。
「……? 何か用ですか?」
「あ、ごめんなさい、人違いでした!」
「はぁ、そうですか……」
二口が追いかけていた恋人たちは顔を見合わせてなおも怪訝そうに二口を一瞥して、二口の前から去って行った。
遠のいた先で、何やかやと口論を始めてしまった恋人たちに背を向けて、二口はケーキ屋の前までまた全速力で戻った。商品やら何やら放り出したまま出てきてしまったことを思い出して、二口の背に嫌な汗が流れる。
「やっべー現金も置きっぱだし!」
ケーキの代金をしまう簡易の金庫があるとはいえ、持っていくのはそう難しくないサイズだ。二口の頭の中で『全額弁償』の文字が浮かんだ。バイトとはいえ任された仕事を放ってしまうのは許されたことではない。
責任だなんだ全部頭の中から飛んで行って走って追いかけたのに、結局人違いであったし、俺は何をやってんだ、と二口はひとりごちた。
急いで戻ったケーキ屋の店頭には、バイトの面接をしてくれたケーキ屋の店長が仁王立ちで二口を待っていた。
「二口君、どういうことか理由を話してくれる?」
「申し訳ありません……」
「謝罪は後で聞くから。俺は理由が知りたいんだけど」
いらいらした口調で店長は二口に詰問する。二口を信用して一人で店頭販売を任せたのに、現金も商品もほっぽりだしてどこかへ消えてしまったのだから、店長がここまで怒るのも無理はない。
自分の無責任な行動に、二口はひたすら謝罪を重ねて、店長の要求に応えた。
「実は……」
事のあらましを聞いた店長は、深い深いため息をついた。今すぐにクビを言い渡されるだろうと二口は覚悟していたが、店長の口からは『クビ』の二文字は出てこなかった。
もうあと一歩で二人に手が届きそうな距離まで二口が近づいた時、ベルの音を気にして目の前の二人が二口の方に振り返った。
「……あ」
ばしっと音がしそうなほど、二人と二口の視線が交差した。
しばらくお互い固まっていたが、二人の方が怪訝な顔つきで二口を見やった。
「……? 何か用ですか?」
「あ、ごめんなさい、人違いでした!」
「はぁ、そうですか……」
二口が追いかけていた恋人たちは顔を見合わせてなおも怪訝そうに二口を一瞥して、二口の前から去って行った。
遠のいた先で、何やかやと口論を始めてしまった恋人たちに背を向けて、二口はケーキ屋の前までまた全速力で戻った。商品やら何やら放り出したまま出てきてしまったことを思い出して、二口の背に嫌な汗が流れる。
「やっべー現金も置きっぱだし!」
ケーキの代金をしまう簡易の金庫があるとはいえ、持っていくのはそう難しくないサイズだ。二口の頭の中で『全額弁償』の文字が浮かんだ。バイトとはいえ任された仕事を放ってしまうのは許されたことではない。
責任だなんだ全部頭の中から飛んで行って走って追いかけたのに、結局人違いであったし、俺は何をやってんだ、と二口はひとりごちた。
急いで戻ったケーキ屋の店頭には、バイトの面接をしてくれたケーキ屋の店長が仁王立ちで二口を待っていた。
「二口君、どういうことか理由を話してくれる?」
「申し訳ありません……」
「謝罪は後で聞くから。俺は理由が知りたいんだけど」
いらいらした口調で店長は二口に詰問する。二口を信用して一人で店頭販売を任せたのに、現金も商品もほっぽりだしてどこかへ消えてしまったのだから、店長がここまで怒るのも無理はない。
自分の無責任な行動に、二口はひたすら謝罪を重ねて、店長の要求に応えた。
「実は……」
事のあらましを聞いた店長は、深い深いため息をついた。今すぐにクビを言い渡されるだろうと二口は覚悟していたが、店長の口からは『クビ』の二文字は出てこなかった。