スモーキー・ブルース/烏養繋心
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ホントにあんた恥ずかしげもなくよく言えるよな。ある意味感心するわ」
「それほどでもないですよ」
「いや、褒めてねぇし」
彼女とのこういうやり取りも慣れてきたのか、そう言いながらも俺の口元は緩んでいた。
軽く笑うと、黒崎さんは宝物を見つけた子供みたいにまた目を輝かせた。
「な、なんだ? なんでそんな目で俺を見てんだ」
「だって! 繋心さんの素で笑ったところ、間近で見られたから」
「……っ」
また。
そうやって恥ずかしげもなく、そういう事を言う。
これが計算なんだとしたら、黒崎さんは相当な悪女だ。
だけど、どうもそうは見えなかった。
大体嘘をついてまで俺に取り入る必要性がないし、彼女にとって何の利益もない。
いまだに何で彼女が結婚に執着していて、俺との付き合いを望むのかは不明だったが、目の前で嬉しそうに微笑むその笑顔だけは、信じてもいいような気がしていた。
**************
夜、バレー部のコーチの仕事を終えて帰宅すると、案の定彼女の姿があった。
「繋心さん、おかえりなさい!」
ご丁寧に可愛らしいピンクのエプロン姿で出迎えてくれた黒崎さんに、もはやツッコミを入れる気力もなかった。
「……ただいま」
黒崎さんが台所に戻ると、母ちゃんと黒崎さんの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
うちの母親とはもう仲良くなってしまたらしい。
相手の懐に飛び込んでいくその行動力は称賛に値すると思う。
「繋心さんの好きな玉こんにゃくもありますから!」
言われて、ちゃぶ台に並べられたおかずを見れば、確かに俺の好物の玉こんにゃくもあって。
こっくり飴色に輝く玉こんにゃくは、見てるだけでごくりと唾を飲み込みたくなるほど美味そうだ。
「あんた早く手洗っといで。せっかく美咲ちゃんが作ってくれたご飯が冷めちゃうだろ」
母ちゃんに急かされて、手洗い場へと急いだ。
居間に戻ってくると、黒崎さんは帰り支度を始めていた。
「あ? 食っていかねぇの?」
思わずそんな言葉をかけてしまっていた。
俺は何を言っているんだろう。
その気なんてねぇんだから、さっさと帰ってもらった方がいいてのに、わざわざ引き留めるようなことを言って。