スモーキー・ブルース/烏養繋心
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ほんのり赤く染まった頬と、サイズオーバーでだぼだぼの彼女の姿を見たら、ほんの少しだけ、米粒かごま粒くらいの大きさだけ、可愛い、と思った。
「…ったく、調子狂うわ。あんたといると」
「うへへ」
「変な笑い声出すな」
「ごめんなさい」
そう謝りながらも黒崎さんは嬉しそうに笑う。
さっきまでどうやって追い返そうかと考えていたのも馬鹿らしくなるくらい、彼女が嬉しそうな顔をするので、仕方なく収穫を手伝ってもらうことにして、虫退治は俺がすることにした。
「繋心さん、終わりましたよー!」
「あんがとさん。後で持っていくから、籠はそこに置いといてくれ」
「はい、分かりました。他に何か手伝う事ありますか?」
「いや、特にねぇよ。あんがとな。……あ、ちょっと待っててくれるか」
頷く黒崎さんを後にして、店へと足早に駆け込む。
レジ前から居間に続く引き戸を乱雑に開けて、奥へと声を張り上げた。
「母ちゃん、あったかい缶のお茶ってまだあるか?」
「もう飲んじまったよ。お湯沸いてるから、自分で淹れな。今手が離せないから」
「わぁったよ」
店から居間へと上がって、台所まで大股で歩く。
さっさと畑に戻るつもりだったのに、誤算だった。
電気ポットは確かに熱々で、近くにあったちょっと古びた急須に緑茶のティーパックを放り込んで、お湯を注いだ。
白く立ち上る湯気が、冷えた体に染みるようだった。
ガラガラと店の戸を開けて、畑にいる黒崎さんに向かって呼びかける。
「黒崎さん、悪ぃ、こっち来てくれ」
「はーい」
寒い中待たせたことが少し申し訳なかったが、黒崎さんの明るい声に救われる思いがした。
「はい、お疲れさん」
「わぁ! ありがとうございます!」
淹れたての緑茶を差し出すと、また黒崎さんは目を輝かせて嬉しそうに微笑んだ。
なんでこんな幸せそうな顔をするんだろうか。
たかが、緑茶一杯いれただけだというのに。
「美味しい」
「……そうか? いたってフツーの緑茶だぞ」
「美味しいですよ。繋心さんと飲むお茶ですもん」
「ぶっ!」
黒崎さんの言葉に思わずお茶を噴き出してしまう。
なんでこの子はこう臆面もなくそんな言葉を口に出来るのか。
聞いてるこっちはこっぱずかしくて仕方ねぇのに。