スモーキー・ブルース/烏養繋心
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「前も、あったでしょ? 車で送ってくれた時に“悪い男だったらどうする”って凄んできた事。 あれがあったから、分かったんです。繋心さんは、本当に私に諦めさせたいんだなって。
襲うフリしてるだけで、その気は無いって分かりました」
そこまで見抜いていたとは、思っていなかった。
じゃあなんだってあの時、黒崎さんは涙を流すほど怯えていたんだ。
俺のがフリだと分かっていたなら、あそこまで怯えなくても良かったはずだ。
「──繋心さんに、あそこまでさせてしまった事が、申し訳なくて。…悲しいのと、自分の浅はかさが恥ずかしくなって……好きにさせてみせる、なんて大見得切ったのに。ダメでしたね」
黒崎さんはわざとおどけたように肩をすくめてみせた。
あの夜の涙の意味は、そういう事だったのか。
黒崎さんがそこまで考えていたとは、俺は露ほどにも知らなかったし、気付かなかった。
「…もう、今日で繋心さんに付きまとったりしませんから。安心してください。…あ、でも病院ではすれ違ったりするかもですけど…でももうお家に押しかけたりはしませんから」
包み隠さず話し切ったことで、何か吹っ切れたのだろう。
黒崎さんは驚くほどあっさり、俺との関係を断ち切ろうとしていた。
家にやって来たあの時といい、今といい、この子は思い切りが良すぎるんじゃねぇか。
…俺の気持ちガン無視で話進めるんじゃねぇよ。
「おい、何1人で話進めてんだよ」
「え?」
ガリガリと後頭部を掻きながら、黒崎さんの話を遮った。
遮ったのはいいものの、どこから何を話せばいいのか、まとまらない。
まとまらない頭のまま、俺の口は勝手に動き出していた。
「あー……あのな、俺も色々考えたんだけどよ。やっぱり今すぐ結婚てのはムリだ」
「はい。分かっています」
俺の想いが半分しか伝わっていないような気がして、それまでそらしていた視線を彼女に戻した。
じっと俺を見つめる黒崎さんの目は、どこか決心がついたように真っ直ぐな目をしている。
「その…あんたはまだ若い。他に探そうと思えばいくらでも相手は見つかると思う。だから俺にこだわる理由はないんだ」
だんだんと、黒崎さんの目が揺れていくのが分かった。
じわりと滲みだした瞳に、焦りを感じる。