スモーキー・ブルース/烏養繋心
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「…さっき、お父さんとお子さんが来られましたよね」
「ああ」
「以前も、繋心さんは似たようなことされていたんですよ。覚えていませんか?」
「似たようなこと……? さぁ、心当たりはないが……」
そうですか、と言って黒崎さんは微笑む。
「覚えていないということは、きっと繋心さんにとっては当たり前のことで特別なことじゃないからなんでしょうね」
そう前置きして、黒崎さんは以前見かけた俺の話を始めた。
*********
私が繋心さんを初めて見かけたのは、じっちゃんに付き添って病院の中庭を散歩していた時のことでした。
その日はとても穏やかな気候の日で、「散歩日和だね」なんてじっちゃんと話ながら、じっちゃんの車椅子を押して日光浴をしていました。
そうしたら、突然、男の人の怒った声が聞こえたんです。
「ごらぁ! そんなとこ登ったら危ねぇだろーが‼」
それまでの穏やかな時間が吹っ飛ぶような、ものすごく大きな声だったので、私もじっちゃんもその声がした方へ自然と目が向きました。
そこには、金髪の見た目ガラの悪そうな男性がいました。
その男性は眉を吊り上げて、木の上を睨んでいます。
見れば、小さな子供が木登りをしていたのか、細く頼りない枝をギュッと握りしめていました。
面白がって木登りでもしていたのか、と私は思いました。
子供がちょっとした好奇心で木に登ってしまうのはよくあることだと思っていたので、あそこまですごい剣幕で怒らなくても、と少し思いました。
──けれど、きっとあの時。
繋心さんは今にも折れそうな枝を見て、子供が怪我をしないか心配していたんですよね。
それに、繋心さんは子供が木登りをしていた理由にも、ちゃんと気が付いてあげていましたよね──
「あ? 何だ、コレを取ろうとしていたのか? ホラよ」
言って、男性は木の上の方にひっかかっていた小さな靴をひょいと取って、ついでのように子供を抱えて木から降ろしていました。
そして、ポカンとしている子供に「こういう時は、大人を呼べ。怪我でもしたらどうすんだ」と、先ほどまで大声で怒鳴っていた人物とは思えないほど優し気な声音で言って、子供の頭を撫でていたのです。