スモーキー・ブルース/烏養繋心
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いや、俺は高校生に手を出すほどロリコンじゃねぇ。
そういう目で見たことはない。断じて。
「──とにかく、俺は見合いするつもりねぇから。悪いけど、帰ってくれ」
「私、料理得意なんです」
「……アンタ、俺の話聞いてたか?」
こいつ、てんで人の話聞いてやしねぇ。
見合いする気はねぇって、ハッキリ言ったのに。
にっこり笑顔を浮かべて、俺の断りの言葉は全部はねのけた、って顔してやがる。
「繋心さんのご両親との同居だって厭いませんし、店の手伝いだってします」
「いや、そういう問題じゃねぇんだ」
「見た目が気に入らないんだったら、繋心さんの好みに合うよう努力しますし」
「だから、な」
「お見合いだから恋愛感情がわかない、ってことが心配なのであれば、私のこと好きにしてみせますし」
「あのなぁ……」
そういう事じゃねぇんだよ……。
俺は今、誰ともそういう関係になる気はねぇってのに。
なのに、この黒崎さんときたら、一歩も引く気はねぇみたいで、俺はどうやったらこいつを追い払えるのかと無い頭をうんうんとひねった。
ちょうどそこで、学校のチャイムが鳴りだした。
チラと店内の時計を見れば、針は12時を指している。
強制的にこいつを追い出すいいチャンスだ。
昼は烏野生が昼食を買いにやってくる。
店があるからといえば、さすがのこいつも帰るだろう。
「ワリィけどよ、今から店出さなきゃだから」
返事を待たずに、俺は店内に戻った。
小さなワゴンにおにぎりやらカップ麺やらを手際よく並べて、店の外へと出す。
「…アンタ、何してんだ」
「私もお手伝いします」
甘かった。
ほっときゃ帰るだろう、なんて甘い考え、この猪突猛進女には通用しなかった。
準備がいいことに、エプロンを持参していたらしく、ささっとエプロンを身に着けた黒崎さんはまたニコッと俺に笑みを向けた。
駄目だ。
これは何を言っても引き下がる気はないらしい。
怒鳴り散らしてビビらしてでも追い払おうかとも思ったが、そうこうしているうちに学生連中がこっちに向かってきているのが目に入って、半ば諦めに近い心境になった。
昼の仕事が終わったら、考えよう。
ワゴンを前にお客に向けて、一応の愛想をみせようとしたその時だった。