スモーキー・ブルース/烏養繋心
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そんなこと言ってっと、結婚しそびれるぞ」
「今は昔と違うんだぜ、じいさん。じいさんの頃は結婚して子供増やしてってのが務めだ、当たり前だってされてたのかもしれねぇけどよ。今はそうじゃねぇ。選択肢が増えてんだ。家庭をもつことだけが人生のすべてじゃねーんだ」
俺は何も間違ったことを言っちゃいないはずだ。
大体今の世の中だってそういう風潮じゃねぇか。
結婚する選択肢もあれば、しない選択肢もある。
子供を持つ選択肢もあれば、持たない選択肢もある。
こうでなければいけない、なんて画一的な考え方は、今はもう古いもののはずだ。
それなのに、なんで俺は自分の言葉が空虚なものに感じているんだろう。
自分で口にした言葉なのに、どこか上っ面を撫でているような気がするのは、何故だろう。
「お前、一生独身のつもりなのか?」
「…そうじゃねーけど」
別に結婚したくないってんじゃない。
これから先、そういう気持ちになることもあるかもしれない。
「いつかは家庭を持つことを考えるかもしれねぇけどよ。今じゃない。いずれタイミングが…」
「なんだ、そうか。遅いか早いかなら、早い方がいいじゃねぇか」
俺の言葉を最後まで待たずに、じいさんは口を開いて矢継ぎ早に話し始めた。
…せっかちなところが、年を取るたびに酷くなっている気がする。
「タイミングなんてこと言ってっと、機会そのものを逃すぞ。人生ってのはな、繋心。巡りあわせで出来てんのさ」
「……」
「お前が烏野のコーチに就いたのも、あの先生やチビ助達がいたからだろう。結婚だってそれと同じだ。今巡り巡ってお前と美咲さんは出会った」
「だから、結婚しろって? 俺と黒崎さんの気持ちは置き去りでか?」
いやみっぽく返すと、じいさんは首をかしげた。
おかしいな、と呟いて、じいさんは続ける。
「なんだ、お前の母さんから美咲さんはもとより、繋心もまんざらでもなさそうだと聞いとったが?」
俺の知らないところで、母さんとじいさんは見合いの話をしていたらしい。
まんざらでもない、か。
確かに始めは押しの強さに閉口していたが、最近ではそれすら受け入れ始めていたようにも思える。
なんだ、俺は結局どっちなんだ。
彼女に対する態度と同じで、俺の気持ちもどっちつかずでフラフラしている。