スモーキー・ブルース/烏養繋心
名前変換はココで!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*************
「なんだお前、手土産ひとつも無しか」
じいさんは開口一番、不満をあげた。
母ちゃんに持たされた唯一の手土産も、今はどこかの病室に飾られているだろう。
何もなくて悪かったな、と舌を見せてやると、じいさんは全く気が利かんな、と言いながら首を振った。
「まぁいい。それより、見合い相手とはどうだ?」
「…何でそのこと知ってんだ。母ちゃんが話したのか」
いきなり見合いの話を切り出したじいさんを訝し気に見る。
するとじいさんはカッカッと笑いだした。
「俺が繋いだ『縁』なんだ。無下にすんなよ」
「はぁー?!」
「おい、うるせぇぞ繋心。ここは病室だ」
うるせぇもクソもあるかってんだ。
『俺が繋いだ』ってどういう事だ。
黒崎さんの事は、じいさんが仕組んだってことなのか?!
モロに顔に出ちまっていたらしい俺の疑問に、じいさんはあっけらかんと答え始める。
「同じ病棟にいる人のお孫さんでな。話を聞けば小さい頃に両親を事故で亡くして、じいさんと2人で暮らしてきたっていうじゃねぇか。そのじいさんが死ぬ前に孫の花嫁姿を見たいって言っててな。俺もひ孫の顔早く見てぇと思ってたとこだし、ちょうどいいなって話になってな」
「はぁ?! ひ孫?!」
ツッコミたいところは色々あったが、じいさんの最後の言葉に思わず声を上げていた。
ひ孫って、おいおい。
なんの冗談だよ。
「ちょっと前に敬三のところにひ孫が生まれたんだけどよ、見舞いに来ちゃあひ孫自慢してくるもんだからな。俺にもひ孫自慢させてくれや、繋心。お前も26だろ?」
「まだ、26だ」
『まだ』の部分を強調して言うと、じいさんはやれやれといった顔で首を振る。
「お前の年の頃には、俺はもう子供がいたぞ」
「そうかよ。…っつっても俺はまだ結婚する気ねーから」
ここ最近で、もう何度この言葉を口にしたか分からない。
黒崎さんにも、周囲の人間にも、俺は何度この言葉を吐いただろうか。
口にするたび、自分自身に暗示をかけているような気にもなる。
俺は黒崎さんと結婚する気はない。
だから彼女と付き合うつもりもないんだと。
時折ぐらつく気持ちを抑え込むように、気持ちは無い、と口にしているような気もする。